ボクとトイとケイ

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「食べ過ぎた。お腹痛い。ちょっとトイレに行ってくるね」 「ったく。なにやってんだか」 「私は食べすぎると腹痛を起こすって、マイクは知っていただろう? 『食べすぎじゃない?』って言ってくれればこんなことには――」 「人に頼りすぎでーす」 「はーい。ごめーん」 「って、そんなのんびりしてて平気なの?」 「おっと。急いで行ってくる」  チモキさんのお腹が、グルグルって鳴った。  チモキさんはちょっと恥ずかしそうに笑って、頭を掻いて、部屋から出て行った。  ボクはまた、モヤモヤした。  ボクの悩みごとについて考えてくれていたと思ったのに、お腹が痛かっただけかよって、なんだかがっかりしたんだ。 「お待たせ~。スッキリしたよ」 「間に合ってよかったね」 「ああ。ギリギリだった。……って、あれ? 何かあったのかい? トッド」 「……え?」  あれ? もしかして、がっかりが心から飛び出してしまっているのかな。 「えっと、そのぅ……。ボクの悩みごと? 相談? のことを、考えてくれてるんだと思ってたんだけど、お腹が痛かっただけなんだ、って、思って」 「ホッホッホ! がっかりした?」 「うん。ちょっと……がっかりした」 「考えてはいたよ。途中までは、ちゃんと。でも、途中からお腹がグルグルってなっちゃって。ごめんね。集中していないように感じたんだね。そうだね。トッドは私が食べ過ぎたらお腹が痛くなることも、そういう時、まるで深く考え事をしているような顔をしてしまうことも、知らないもんね。そりゃあ、知らないのにさ、相談事の途中でそういう、親身になって考えてますって感じの顔をされたらさ、期待するよね。ごめん。あと、話してくれて、ありがとう。何かしたかな、どんなところが良くなかったかな、って、なんだかドキドキしちゃったよ」 「え?」 「ああ、きっと、トッドもこんな気持ちになったんだね。何かしたかな、って、ドキドキしちゃったんだね。でもさ、今みたいに、期待とかそういう、心の中にある想いがツンツンしちゃうことって、きっとよくあることなんだよ。今はちゃんと話をして、お互い歩み寄ることができたね。じゃあ、トッドとそのお友だちとは、どうだろう。歩み寄れているかなぁ」  ボクは、ケイにどうしてツンツンしているのか訊かなかった。きっとボクが何かしちゃったんだろうって考えて、理由がわからないまま謝った。  でも、それはすれ違ってしまったってことなのかな。このままボクがケイに歩み寄ることがなければ、もう歩み寄ることはできないかもしれない。すれ違って、違う方向に歩いて、進んで、離れてしまうかもしれない。 「ボク、訊いてみようかな」 「なにを?」 「ケイに、ボクが何かしちゃったのか」 「トッド。キミに〝悪いことをした〟という自覚があるなら、それでもいいかもしれない。でもね、トッド。〝悪いことをした〟という自覚がないのなら、自分が悪者であるという決めつけをして問いかけるのは良くないと、私は思う。何かしちゃったのかを尋ねるんじゃなくて、何かあったのかを尋ねてみたほうがいいんじゃないかなって、私は思う。そうして、その子がキミに何かされて傷ついていることが分かったなら、その時はじめて『ごめん』って言えばいいんだよ」 「……うん。わかった。チモキさんの言う通り、まずは何かあったか、訊いてみる」 「キミならできるよ。それに、キミならきっと……仲直りもできる。より深い仲にもなれる。自分を信じてね」
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