3人が本棚に入れています
本棚に追加
帰り道、ボクはマイクの隣を、マイクみたいにしっかりした足取りで歩いた。
歩きながらマイクは、チモキさんへの不満ごとをグチグチと口にした。でも、不満ごとを吐きだしているくせに、目は笑ってた。
マイクとチモキさんは、そういう仲なんだ。言いたいことを言い合えて、ちょっとした不満ごとなんて受け入れられちゃうくらいの仲。
ボクとマイクも、全く一緒っていうわけではないけれど、似たような仲だと、ボクは思う。
そしてボクは、ケイともそういう、ちょっとしたことなんて許せちゃうような仲になりたいなって、思う。
今日も、ケイはどこかツンツンしてる。
ボクは大きく深呼吸をしてから、ケイのもとへと歩いていった。
「げ、元気?」
「あ、あぁ」
「あ、あのさ。ケイ、何かあった?」
「は?」
「いや、そのぅ。なんか、何かあった顔に見えたから。気になって」
「う、うーん」
ケイは、すごく困った顔をした。モジモジしながら、時々チラチラとボクを見る。
「放課後、ミヤナさんの家に来いよ」
確かに聞こえた。でも、ケイの言葉とは思えないくらい、小さな声だった。
「え?」
「いいから、来い!」
放課後、ボクは言われたとおりに、ミヤナさんの家へ行った。
ミヤナさんの家は、まるで全く別の家を置き換えたみたいに、姿を変えていた。きらびやかな装飾が施されていて、おとぎ話の世界から飛び出してきたみたいに見えた。
コンコンコン、と扉をノックしてみたけれど、応答はない。
ボクは空気を肺いっぱいに吸い込んで、「こーんにーちはー!」と叫んだ。
ギィと扉が開く、すると、
パン、パン、パーン!
クラッカーの音が鳴り響いた。
「ハッピーバースデー!」
サプライズだ!
地域のみんながニッコリ笑顔で、ボクにサプライズをしてくれたんだ!
みんなのことをよく見てみると、ひとりだけ照れ臭そうに頭を掻いている人を見つけた。
みんなはその人の背中を、ドン、ドンとボクの前まで押した。その人は、何やら大きな袋を持っている。
「これ、やる。何が欲しいか訊けばよかったんだけど、そんなのつまらないし。でも、どれだけ考えても、いいものが思い浮かばなくて」
「ありがとう、ケイ。ねぇ、開けていい?」
「おう」
みんなに見守られながら、ボクは袋を開けた。
中に入っていたのは、ボクにはよく分からないゲームだった。
「ごめん。俺が欲しいやつ、買ったんだ」
「そっか。……じゃあ、これからもケイと遊べるってことだね! ありがとう。すごく嬉しい!」
「……え?」
ケイの顔が驚きで染まる。
長い付き合いだけど、こんな顔、見たことない!
『ケイが固まってる!』
『ケイが泣きそう?』
『ケイがこんな顔するの、はじめて見た!』
たくさんの笑顔が、ケイを囲む。
「ごめん。サプライズを仕掛ける側なのに」
「謝ることないよ」
「だけど……」
「ボクは、うれしい! ケイと一緒にビックリできて、サイコーな気分だよ!」
パチパチと拍手が響く。
その中心で、ボクらは笑う。
「ごめん。サプライズのこと、バレたくなかったんだ。それで、絶対良くないってわかってたけど、避けちゃった。そうしたら、トッドが離れていっちゃって、もう、どうしたら良いのかわからなくなっちゃって……」
ボクにだけ聞こえる、小さな声。
「そういうことだったんだ。教えてくれてありがとう。またこうして話せて、ボクはとっても嬉しいよ! ボクは今日の思い出も、プレゼントも。ずーっと大事にするからね」
それからケイは、ボクの大親友になった。
内緒のことがある時は、内緒のことがあるってことだけ言う。
そうして今は、ただ幸せなサプライズを繰り返してる。
最初のコメントを投稿しよう!