ボクとトイとケイ

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 帰り道、ボクはマイクの隣を、マイクみたいにしっかりした足取りで歩いた。  歩きながらマイクは、チモキさんへの不満ごとをグチグチと口にした。でも、不満ごとを吐きだしているくせに、目は笑ってた。  マイクとチモキさんは、そういう仲なんだ。言いたいことを言い合えて、ちょっとした不満ごとなんて受け入れられちゃうくらいの仲。  ボクとマイクも、全く一緒っていうわけではないけれど、似たような仲だと、ボクは思う。  そしてボクは、ケイともそういう、ちょっとしたことなんて許せちゃうような仲になりたいなって、思う。  今日も、ケイはどこかツンツンしてる。  ボクは大きく深呼吸をしてから、ケイのもとへと歩いていった。 「げ、元気?」 「あ、あぁ」 「あ、あのさ。ケイ、何かあった?」 「は?」 「いや、そのぅ。なんか、何かあった顔に見えたから。気になって」 「う、うーん」  ケイは、すごく困った顔をした。モジモジしながら、時々チラチラとボクを見る。 「放課後、ミヤナさんの家に来いよ」  確かに聞こえた。でも、ケイの言葉とは思えないくらい、小さな声だった。 「え?」 「いいから、来い!」  放課後、ボクは言われたとおりに、ミヤナさんの家へ行った。  ミヤナさんの家は、まるで全く別の家を置き換えたみたいに、姿を変えていた。きらびやかな装飾が施されていて、おとぎ話の世界から飛び出してきたみたいに見えた。  コンコンコン、と扉をノックしてみたけれど、応答はない。  ボクは空気を肺いっぱいに吸い込んで、「こーんにーちはー!」と叫んだ。  ギィと扉が開く、すると、  パン、パン、パーン!  クラッカーの音が鳴り響いた。 「ハッピーバースデー!」  サプライズだ!  地域のみんながニッコリ笑顔で、ボクにサプライズをしてくれたんだ!  みんなのことをよく見てみると、ひとりだけ照れ臭そうに頭を掻いている人を見つけた。  みんなはその人の背中を、ドン、ドンとボクの前まで押した。その人は、何やら大きな袋を持っている。 「これ、やる。何が欲しいか訊けばよかったんだけど、そんなのつまらないし。でも、どれだけ考えても、いいものが思い浮かばなくて」 「ありがとう、ケイ。ねぇ、開けていい?」 「おう」  みんなに見守られながら、ボクは袋を開けた。  中に入っていたのは、ボクにはよく分からないゲームだった。 「ごめん。俺が欲しいやつ、買ったんだ」 「そっか。……じゃあ、これからもケイと遊べるってことだね! ありがとう。すごく嬉しい!」 「……え?」  ケイの顔が驚きで染まる。  長い付き合いだけど、こんな顔、見たことない! 『ケイが固まってる!』 『ケイが泣きそう?』 『ケイがこんな顔するの、はじめて見た!』  たくさんの笑顔が、ケイを囲む。 「ごめん。サプライズを仕掛ける側なのに」 「謝ることないよ」 「だけど……」 「ボクは、うれしい! ケイと一緒にビックリできて、サイコーな気分だよ!」  パチパチと拍手が響く。  その中心で、ボクらは笑う。 「ごめん。サプライズのこと、バレたくなかったんだ。それで、絶対良くないってわかってたけど、避けちゃった。そうしたら、トッドが離れていっちゃって、もう、どうしたら良いのかわからなくなっちゃって……」  ボクにだけ聞こえる、小さな声。 「そういうことだったんだ。教えてくれてありがとう。またこうして話せて、ボクはとっても嬉しいよ! ボクは今日の思い出も、プレゼントも。ずーっと大事にするからね」  それからケイは、ボクの大親友になった。  内緒のことがある時は、内緒のことがあるってことだけ言う。  そうして今は、ただ幸せなサプライズを繰り返してる。
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