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ボクには、ケイという名前の友だちがいる。小さい頃から同じ街に住んでいて、園や学校がずーっと一緒。時々、休みの日に一緒に出かけたりもするくらい、ボクらは仲良し……だと思っていた。
だけど、ある日、ケイに話しかけたら、そっけない言葉と冷たい視線が返ってきた。ボクは突然、敵意のような何かを向けられたと感じた。
驚いた。混乱した。困惑した。焦った。
考え事がぐるぐるして、冷静な判断をすることなんて、できなくなった。
何をしてしまったかわからないけれど、とにかく謝ったほうがいいと思って、
「ご、ごめん!」
頭を下げて、謝った。でも、謝っても、元通りにはならなかった。
それからボクは、ケイとろくに挨拶もできなくなった。
ケイがいないと生きていけない、なんてことはない。
でも、ケイと話せないってなると、心がチクチクして仕方ないんだ。
たまたますれ違っただけの、名前も知らない誰かだったら気にならない。
でも、ケイだと気になる。
ボクはこの悩みについて、クラスメイトのマイクに相談してみた。
「なんかした? って、訊けばいいじゃん」
「それができたら、苦労しないよ」
「余計な苦労をしてるだけだと思うけどな。訊く方が絶対に楽だと思うけどな」
「マイクにとってはそうかもしれないけれど、ボクにとってはそうじゃないんだよ」
「ふーん」
ボクの心は、ズバズバものを言えるマイクには、わかってもらえない。
「ま、あれだ。俺じゃ今のお前の力にはなれそうにないや。ミヤナさんのところにいこうぜ。きっと力になってくれるから」
そう言って、ずんずん力強く歩くマイクの後ろを、ボクはとぼとぼとついて行く。
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