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プロローグ
神やあやかしが入り乱れる今世日本。
ひとびとは、彼ら人外なる者たちの力を借りながら、平和に暮らしていた。
表向きは――。
白玖の守る笠屋敷家も、人外なる者の加護を受けた家のひとつであった。
笠屋敷家は、旧財閥であった。軍事産業で財を得た財閥だ。
しかし、戦後再び世界を巻き込んだ大戦が起こることを恐れた国は、財閥を解体。資産の大部分を取り上げられた財閥は、どんどん破産した。破産せずとも、ほとんどの家が困窮していた。
当時の笠屋敷家当主、玲楽は家を守るべく、禁忌を犯した。
禁忌――それは、神との契約である。
笠屋敷家は戦後、蛇神と契約。蛇神の加護を得て窮地を脱し、一族を発展させてきたのである。
蛇神の加護は大きく、笠屋敷家は恐ろしいほどの成長を見せた。
しかしその代償は大きかった。
笠屋敷家はたしかな繁栄を得る代わり、花嫁を生贄として、蛇神に差し出さなければならなかったのである。
そしてその花嫁は、次期当主の花嫁と決められていた。
そのため笠屋敷家の嫡男の花嫁は例外なく、一族の業をすべて背負い、嫁いだ七日後に死ぬ。
今宵、次期当主、白玖はとうとう花嫁を娶る運びとなった。
生贄となる花嫁の名は、秋月橘花。
秋月家は、あやかしの血が混じる混血の一族であるいわくつきの家系だ。そのため贄の花嫁に選ばれた。
橘花は、あやかしの能力を引き継いで生まれた姉、玲花と違い、特殊な力は使えない。しかしその代わり、その身に猛毒を宿しているという。触れた者をたちまち死に追いやる恐ろしい力で、そのせいで彼女の母親と助産師が死んだとか。
橘花は生まれながらに一族から忌み嫌われ、蔵の座敷牢に幽閉されているという。
ときの当主、清雅は橘花を贄の花嫁に選んだ。
彼女なら、死んでも文句は言われない。これ以上ない適任であると。
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