クロワッサンについての考察。あるいは人類の敗北。

食べ方！

「ねえねえ、みんなクロワッサンってどう食べる？」
　私は職場で聞いてみた。皆一様に首をかしげた。
「どうって、ボロボロ崩れるのをいかに防ぐかって事かな？」と島田先輩が言葉足らずな私を補足してくれた。
「俺、全部、一気に口に入れるから、パン屑は出ないぜ！」と同期の武田くんは言い、大きな口を開けた。彼の1発芸は握り拳を口に入れる事だ。
「僕は普通に食べます。大きい破片は食べるけど、小さい破片は諦めます」と後輩の安達くんが言った。
「私はそうねぇ。クロワッサンってさ。層になってるでしょう。この層にそってちぎるの。多少はマシよ」と島田先輩が言った。「でもさ、クロワッサンをこぼさない食べ方あるのかな？」

「吸い込みながら食べるとか」と私。バターの香りも楽しめて一石二鳥かも知れない。
「いや、私、それを試したけど、あんま意味無かったわ」と島田先輩。
「小さい紙袋に入れて齧るのはどうでしょう？そうすれば、パン屑が溢れません」と安達くん。
「紙袋に残ったパン屑は？」と島田先輩が言い、安達くんを見た。
「ええと……紙袋を口に当てて、シャーっと流し込みます。ポテトチップスみたいに」と安達くんは言い、飲み物をラッパ飲みするような仕草をして見せた。
　それを見た島田さんは「ちょっとエレガントさに欠けるわね」と小さく呟き、安達くんは「すみません……」と小さく頭を下げた。
「いやいや、謝るトコじゃないから」と島田先輩は苦笑を浮かべた。
「エレガントって言ったら、西園寺さんなら分かるんじゃないの」と武田くんが言った。「あの人ならクロワッサンにも勝てる」