爆弾パニック

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「お前、挙動不審だったから相手にされなかったんじゃねーか?」 「だって、お客様のフリをして話を聞くなんて無理だもの!」  お客様だと思って一生懸命説明をしてくれる相手には申し訳ないが、他社のシステムの使い勝手などを学ぶ大事な機会(チャンス)。  だけど同業者とバレない様に受け答えしようと思うと、パニックして頭の中が真っ白になる。 「俺、開き直って同業者だって言いながら話を聞いてきたぞ」  いや、同業者と言ったら言ったで、私が無知過ぎて恥をかきそうだ。 「ほら、早くしないと終了するぞ。出来るだけ俺と被らないように…ココとココ、行ってこいよ」と出店企業一覧表にチェックを入れる。  はぁ〜……、こんなはずじゃ無かったのになぁ。  悠希とは同期入社ではあるが、悠希は大卒のシステムエンジニア、私は短大卒のほぼ事務員。同じノルマを求める事はやめて欲しい。  でも今回の出張は、本当に(ほんとーーーーーに)楽しみにしていたのだ。  入社時から気が合い、悠希の事を意識して片思い丸2年。  3カ月前、悠希の方から「ずっと好きだった」って告白してくれた。  だけどお互い仕事が忙しく、近場散策やお家デートぐらいしか出来ていなかった。  だから今回の出張は、ふたりきりで初めての遠出(とおで)なのだ!  明日は休日なのでせっかくなら横浜でお泊りして……なんて言ってみたかったけど、私が明日は本社に出勤予定があるので、妄想で終わらせた。  それでも展示会が終わったら、夜、横浜中華街でデートする約束をしてくれている。  そうだ。その約束を糧にちゃんとノルマをこなして、気分よく中華街を楽しまなくちゃ! 「じゃあ、俺はウチのブースに居るからな」と悠希は横浜支店が出店しているブースへ向かう。  私は気を取り直して、次の他社ブースへ向かった。
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