爆弾パニック

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「悪い、愛菜。横浜支店の皆が、中華街で飲もうって俺と愛菜を誘ってくれたんだ」  え?じゃあ私達の中華街デートは?? 「愛菜が横浜支店の人達と直接交流することは滅多にないから、参加するって返事したけど……大丈夫だよな?」  横浜支店の社員どころか本社の社員にも、私達が付き合っていることをまだ言っていない。  断っておきながら中華街でデートしているところを誰かに見られたら、後々気まずくて仕方がない。 「……あまり遅くならないように帰ろうね」  私はしぶしぶ了承した。  横浜支店の方々とは電話ではよく話すので、こういうのも大事だよね、今日は仕事で来ているんだから当然だよね、と自分に一生懸命言い聞かせた。 「愛菜ちゃん、飲んでる~?」  赤い顔の支店長が、私に満面の笑みを向ける。 「あ、すみません。こいつ飲めないので」と、隣の座布団に座っている悠希が断る。  私の手元には、よく冷えたウーロン茶が入った大きめのグラス。  悠希はビールで乾杯し、その後焼酎などグラスが空くことなく続けざまに飲んでいる。  お酒、強いとはいえ大丈夫かな……と少し心配になる。 「石川さん、やっとお会い出来ましたね~。私、前田です」と私より少し年上の綺麗なお姉さんが側に寄ってきた。 「あ、その声確かに前田さん!いつもお世話になっています」と座ったまま深々と頭を下げる。 「いえいえ、こちらこそ。いつも無理な注文を聞いてもらってすみません」と、私の横に座った前田さんも頭を下げる。  飲み会開始からこのやり取りをもう何度もしてきたので、既に頭がパニック、帰宅してしまえば誰が誰だったか覚えていないと思う。  悠希は何度か横浜支店へ出張しているので、既に顔なじみなのだ。  あ、流石に支店長の顔は覚えたぞ。記憶は赤い顔のままだろうけど。
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