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悠希は隣に座っているのに、支店の方と話してばかりで遠い存在に感じる。
あーあ。本当なら今頃、ふたりっきりで美味しい中華を堪能していただろうになぁ。
人見知りも発動し、『ご挨拶』が一通り済んでしまえば暇になった。
こうなったら目の前の食事を楽しもう。
私は目の前のテーブルに広がる、小籠包や唐揚げ、焼き野菜など適当に自分の皿に取る。
あれ、この小籠包美味しい。
悠希は食べたかな。
教えてあげたくても、お酒を飲みながら支店の方との話に夢中で私の方を向いてくれる気配がない。
「せっかく横浜に来たんだから、悠希は俺んちに泊っていけよ。この後も飲もうぜ。明日休みだろ。横浜案内するからさ」と横浜支店の同期の男達。
「いや、石川さんいるから…」
「えー。石川さんは酒、飲んでないしさ。子供じゃないんだからひとりで帰れるでしょ」
愛想笑いをする悠希。
え?断らないの?もしかして、本当に横浜に残るつもり!?
……もう、知らない!
私はパクパクッと取り皿の野菜を口に放り込んだ。
―――ぐぅっっっ!!!
突然喉の奥で何かが爆発した様に、強烈な痛みを感じた。
アルコール度数の高いお酒を一気飲みしたような、焼け爛れるような熱さ。
食事に毒でも盛られていたかと思えるような、激しい刺激。
何これ!?私、今何を食べた……!?
―――『ししとう』だ!
ししとうは昔から普通に食べていたし、時々当たる辛いししとうも別に平気なはずだけど……これは酷い!特別製!?
ししとうは生育中のストレスによって辛みが増すって聞いたことがあるけど……どれだけ過酷な環境下で育てられてきたのよ!!砂漠産!?
私は喉の奥の辛さというより苦しさで、涙が溢れそうになる。
水……私のウーロン茶……!
震える手をウーロン茶が入ったグラスに伸ばしかけた次の瞬間、ひょい、とグラスを持っていかれた。
―――はぁっ!?
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