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「飲み過ぎたー。悪い、コレ頂戴」
ごくっ、ごくっ……。
悠希は私の返事も待たず、ウーロン茶を飲みほした。
―――あぁぁぁぁぁっっ!私のウーロン茶がぁっ!!!
酷いショックのあまり、涙が一気にこぼれ落ちる。
苦しくて声も出ない。
私は悠希の袖をつかみ、俯いたまま空いたグラスを指さした。
「え?あ、ごめん。すみませーん」と悠希が店員を呼び、おかわりを注文する。
口を片手で抑えている私は、辛さのあまり多分真っ赤な顔をして泣いていたのだろう。
それを遠くから見た支店長は慌てて飛んできて「石川さん、大丈夫!?無理しちゃダメだよ!?」と声をかけてくれた。いや、お茶さえ飲めば……。
何かを察した悠希は、
「……すみません、石川さん調子悪そうなので帰ります。今日はお疲れさまでした。ありがとうございました」と言って二人分の飲食代を出し、私を外に連れ出した。
私が無言で泣きながら悠希に何かを訴えるというこのシチュエーションを、支店の方々はどう受け止めたのか……。
店を出るとすぐ私は私を支える悠希の手を払い、自動販売機まで直行した。
「愛菜!どこに行くんだよ!」
ピッ。ガコン。
私は無言でペットボトルの蓋を開け、よく冷えた水を一気飲みし「はぁぁぁぁぁ…」と深く息をする。
「……ししとうが辛かったの!!」
面食らう悠希は、私がひとりで帰りたくないと訴えている、と勘違いしていたと教えてくれた。
うん。きっと多分、支店の方もそう思っているのでしょうね……。
後日、横浜支店長からお酒を飲ませすぎて申し訳なかったと謝罪の電話を貰った。
いえ、お酒は一滴も飲んでおりません。
最後に支店長が「皆は『松永君と石川さんが付き合っているんじゃないかって言っていたけど、本当のところどうなの?」と聞いてきたけど、笑って誤魔化した。
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