21人が本棚に入れています
本棚に追加
展示会からしばらく経った頃。
ひとり暮らしをしている悠希が、会社帰りに部屋へ寄って欲しいというので私は定時に上がり、悠希の部屋の中で待っていた。
部屋の隅には1つの段ボール。
あぁ、実家から宅配で送られてきたのね。
送り状の品目には、菓子、野菜……。
展示会の後、横浜支店からの風の噂が元で、本社の皆んなに私たちが付き合っていることがバレた。
一時は冷やかされもしたし、妬まれもした。
(悠希は割とモテるらしい)
だけど、最近では特に周りの目が気にならなくなった。
それは、悠希が毅然とした態度で交際を認めてくれているからのようだ。
「愛菜ごめん、お待たせ。実家で採れた野菜を大量に送ってきてさ。こんなにひとりで食べきれないから、貰って欲しくて」
と、帰ってきた悠希が冷蔵庫から出してくれた野菜は、トマト、茄子、ピーマン……ししとう。
「……特にししとうが豊作だったらしくて……大丈夫?」と気遣ってくれる悠希。
「うん、大丈夫。きっと悠希に美味しく食べて欲しくて、愛情たっぷりに育てられているから辛くないよ。ありがとう、いただきます」
10個に1個の確率で辛いと言われるししとう。
恋愛もそのくらいの割合で刺激があったほうが、上手くいくものだったりして。
平気だ平気だ、と油断していると、痛い目に遭うのかも。
「さて今日はこの野菜を使って、夕ご飯でも作りますか」
辛いものも全部、美味しくいただきます。
……あの時ほど辛いししとう(刺激)は、勘弁してほしいけどね。
(おしまい。ししとうを加熱する時は、先に縦に包丁で切り込みを入れておきましょう。やっておかないと、別の意味での爆弾になります)
最初のコメントを投稿しよう!