この街は

　医学が発達しどんな病も重篤な結果にならないようになって、数百年が過ぎた。
　しかし今、世界は大パニックに陥っている。
　今までにない細菌が現れ、致死率の高い感染症が大流行しているのだ。
　初めのうちは楽観視していた人々も、感染者が増え死者が増えるにつけ恐慌状態に陥り、病そのものよりもそのせいで亡くなる人が多くなっていった。

　あれから三年。
　病はまだ終息していないがパニックは起きなくなった。いや、起きなくなったというよりパニックを起こす人がいなくなった。
　まだそんな人がいるのかもしれないが、少なくとも僕の周辺にはいない。
　パニックを起こす以前にこの辺りにはもう僕しか生き残ってる人はいない。