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「……テレサは、私の今後を思って、こう言ってくれているのよね」
愛されない妻という立場は、ローゼリーンの想像する以上に辛いものなのだろう。
貴族社会の噂の回りは早い。どこぞの夫婦が不仲だとか、愛人を作っただとか。そういうことはあっという間に広がるのだ。
(まぁ、今日の態度の感じだと、私たちも不仲説が囁かれてもおかしくはないわね)
バーグフリートは、ローゼリーンとちっとも目を合わせようとはしなかった。それは、不本意な婚姻であるということを物語っている態度にも思える。
それでもローゼリーンを望み、娶ったのは。やはり、ローゼリーンの立場が魅力的だったからだろう。
「ということは、今夜は期待できそうにないわね」
世間一般的には今夜は初夜になる。が、多分、彼は夫婦の寝室には来ないだろう。
出来れば、そのことを伝えてほしい。そうすれば、ローゼリーンも私室でゆったりと出来るのだから。
「来るか来ないか。そういうことを考えている時間が、一番無駄なのよねぇ」
頬に手を当ててそう呟けば、私室の扉がノックされる。
そして、聞こえてきたのはテレサのものではない、女性の声だった。
「はぁい」
返事をすれば、扉が開く。そこにいるのは、新しく雇った中年の侍女だ。立場は侍女長になると聞いている。
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