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目の前には長方形の大きなテーブル。
そこには真っ白なテーブルクロスが敷かれており、その上にはたくさんの美味しそうな料理が並んでいる。
その中の一つ、本日のメインディッシュであるラムのステーキにナイフを入れる。一口サイズに切り分けて、口に運んだ。
少し離れたところで、料理人がごくりと息を呑んだのが耳に届く。
彼は実家の公爵家で腕を振るう料理長の一番弟子だ。ローゼリーンが嫁ぐ際、せめて食事だけでも慣れたものを……と、父が連れて行きなさいと言ってくれたのが彼。
口いっぱいに広がるのは、食べなれた味。ローゼリーンは心の中で「これよ、これ!」と歓喜した。
けれど、淑女たるもの食事中は騒がないのがマナー。なので、ローゼリーンは一口水を飲んで、料理人に微笑みかける。
「とても美味しいわ。……私の好みにぴったり」
ローゼリーンに声をかけられた料理人が、大きく胸をなでおろした。
そりゃそうだ。ここでローゼリーンの機嫌を損ねれば、路頭に迷うことは間違いない。
だって、ローゼリーンはここの女主人なのだから。
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