第1章

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 ローゼリーンには、意味がわからない。きょとんとしていれば、父は「真剣な話をする」と表情を整え、ローゼリーンを執務室にある応接用のソファーにエスコートしてくれた。 「お父さま、大丈夫ですの? 何処かご体調でも悪いのですか?」  普段は丈夫な父が、弱っている。  驚きも隠せずに、ローゼリーンは恐る恐る父にそう声をかけてみた。父は、ゆるゆると首を横に振るだけだ。 「いや、私はとても元気だ。……悪いのは、心の状態だろうか」 「まぁ。ですが、本日は伯父さまに呼び出されたのでしょう?」  国王とはいえ、父にとっては兄である。そこまで厳しい精神状態になるはずがないのだが……。  と思い、ローゼリーンは頬に手を当てる。父が、膝の上で手を組んだ。 「あぁ、兄上……陛下に、呼び出されていた。そこで、私は一つの打診をされたんだ」 「……打診、でございます?」 「いや、違うな。これは一種の王命だ」  ちょっとだけ、不穏な言葉かもしれない。  リューデル王国の現国王は、権力を振りかざしたりはしない性格だ。そのため、『王命』という言葉など滅多なことでは使わない。  合わせ、それをまさか弟に使うなんて……。 (いいえ、お父さまだからこそ、王命を与えられたのかもしれない)  しかし、そう思いなおした。  血のつながった弟だからこそ。自らの意思を理解して、動いてくれる。そう思い、信頼してくれているのだろう。  ……けれど、それでも不可解なこともある。  それこそ、どうして父がこのことをローゼリーンに伝えたのか、ということだ。 (普通ならば、跡継ぎであるお兄さまのほうに先にお話が行くはずだわ。……なのに、私のほうに来ている)  それすなわち。その『王命』とやらば、ローゼリーンに関係のあることなのだろう。瞬時に、それを理解した。 「この間の戦のことは、覚えているだろうか?」  ふと、父が話の流れをぶった切って、別の話を始めた。
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