第1章

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 この間の戦。ということは、間違いなく『アレ』のことだろう。 「えぇ、本日の新聞にも大々的に載っておりましたもの。……英雄となった騎士の男性に、勲章が贈られるのでしょう?」  記事の最後には、そんな言葉が綴られていた。そのうえで、その男性の欲しいものを一つ、褒賞として与えると。  大方、地位とか爵位とか。そういうものを欲しがるはずだ。……もしくは、一生働かなくてもいいお金、とか。 「ローゼは本当に賢いな。……あぁ、その通り。今度、あのグリューン伯爵家の次男坊には、勲章と褒美を与えると、陛下はおっしゃっていた」  それはそうだろう。国を守った英雄になにも与えないなど、国のトップとしてあるまじきこと。  ローゼリーンだって、それくらい理解している。 「……陛下は男に欲しいものをなんでも与えると言った。そうすれば、あの男、なんと言ったと思う!?」  バンっと目の前のテーブルをたたいて、父が手を震わせる。  ローゼリーンは、小首をかしげることしか出来ない。 「あの男は、妻が欲しいと言ってきたんだ」 「……妻」 「そうだ。ほかでもないローゼリーンを、自身の妻にしたいなどと寝言を言ったんだ!」  ……寝言などと父は言うが。相手からすれば、本当にローゼリーンが欲しいのだろう。  だって、ローゼリーンは現状国で最も身分の高い未婚の子女。 (私と結婚すれば、王族に取り入ったも当然だものね)
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