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この国で現状最も身分の高い未婚の子女。しかも、王族の血を引いている。
そうなれば、妻に欲しがるのもある意味当然かもしれない。
ローゼリーンは多少夢見がちではあるが、割と現実主義者でもある。なので、特別嫌悪感は抱かない。
「……当然かと思いますが。お父さまは、なにがそんなに不満ですの?」
きょとんとしつつそう問いかけてみる。父がローゼリーンを見つめる目は、やっぱり不満そうだ。
「当たり前だろう。私はローゼには幸せになってほしい。そのためには、財力も権力もある。そういう男と結婚するべきだと思う」
……まぁ、貴族の考えとしては正解だろう。そして、娘を持つ親としても、正解の考えだと思う。
「だが、あの男はどうだ? 英雄と呼ばれているが、所詮はそれだけ。実家は落ちぶれていると有名な伯爵家。しかも、次男坊。いくら陛下があの男に新しい伯爵位を与えると言っていても、私は納得できない!」
目の前のテーブルをバンっとたたく父。
ローゼリーンは心の中だけでため息をつく。
この父は。普段は冷静で切れ者、周囲からの信頼も厚い、素晴らしい人だ。
が、しかし。娘であるローゼリーンが関わると一変。子供のような人物に変貌してしまう。
「ローゼは私の宝なんだ。いや、私だけではない。むしろ、国の宝だろう」
「……大げさですけど」
そこまで言われると、もはや逆にバカにされている気しかしない。
父にとって、遅く出来た娘のローゼリーンが宝なのは、百歩譲ってわかる。だが、なにも国の宝ではないだろう。
「まぁ、ともかく。私としては、英雄の騎士さま……えぇっと、バーグフリートさまに嫁ぐことは、問題ありませんわ」
新聞で読んだ名前を、思い出して口にする。父は、眉間にしわを寄せていた。
「だが、ローゼ、私は……」
「お父さまの一存で反対など無謀でしょう。それに、伯父さまのご命令ならば、なおさらです」
父は公爵であり王弟だが、現在の国王には敵わない。それくらい、彼だってわかっているのだろう。気まずそうに、視線を逸らす。
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