第1章

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「それに、私は大丈夫です。いずれは政略的な婚姻をするという覚悟は、常々持っていましたから」  国内の貴族に嫁ぐ可能性も。他国の王族に嫁ぐ可能性も。すべて、考えて、覚悟を持っていた。  王族の血を引く子女というのは、それほどまでに利用価値が高いのだ。 (それに、国内の貴族に嫁ぐのならば、まだマシだわ)  他国の王族に嫁いで、誰一人として知り合いのいない土地に行くより、ずっとマシ……。  ローゼリーンは、間違いなくそう思っている。 「……しかしな、ローゼ。あの男は、英雄である以上に……」 「存じております。『死神騎士』という呼び名もございましたね」  その呼び名の理由は、新聞には載っていなかった。  けれど、おしゃべり大好きな侍女たちによると。彼は特別な感情抱かずに、躊躇うことなく戦場で人を葬っていたと。  それはまるで、死へと落としていく神のように……。 (というわけで、『死神騎士』なのね)  そのまますぎないかと思うが、そこに関しては突っ込まない。わかりやすくていいじゃないか。
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