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「ですが、いくらそんな冷血なお方だったとしても。……私のことを殺したりすることは、ありません」
「……う」
「そもそも、私のことを殺せば、お父さまだけではなく、お兄さまや伯父さまも敵に回すことになりますわ。なんだったら、王太子殿下も」
ローゼリーンは愛されている。しかも、国で重要なポジションにつく人たちに。
「いくら冷血なお方でも、そんな悪手をするとは思えません。なので、大丈夫です」
父にそう伝えてみる。父は、少し迷うような素振りを見せつつも、大きく頷いてくれた。
「わかった。正直、私は未だに納得していないが……。まぁ、了承の返事を出そう」
「えぇ、お願いします」
「だが、結婚してなにかあったら、すぐに連絡を寄越しなさい。また、テレサをはじめとした数名の侍女。あとは護衛を数名、料理人も連れて行きなさい」
……テレサをはじめとした侍女や、護衛はともかく。料理人を連れて行くのは、いいのだろうか?
「慣れない場所で慣れない食事をするのは、辛いはずだ。せめて、食事くらい慣れたものがいいだろう」
でも、それが父の気遣いだとわかったから。ローゼリーンは、拒否することなく頷いた。
「できれば、陛下に顔合わせのほうもお願いしよう」
「はい、お願いいたします」
父の言葉に、ローゼリーンは頷いた。
きっと、顔合わせはあるはずだ。ローゼリーンもそう思っていたのだが……。
まさかまさかで、バーグフリートはこの後辺境のいざこざを治めるために、辺境に旅立ってしまう。
その結果、挙式より前の顔合わせは叶わないのだった。
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