第1章

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「ですが、いくらそんな冷血なお方だったとしても。……私のことを殺したりすることは、ありません」 「……う」 「そもそも、私のことを殺せば、お父さまだけではなく、お兄さまや伯父さまも敵に回すことになりますわ。なんだったら、王太子殿下も」  ローゼリーンは愛されている。しかも、国で重要なポジションにつく人たちに。 「いくら冷血なお方でも、そんな悪手をするとは思えません。なので、大丈夫です」  父にそう伝えてみる。父は、少し迷うような素振りを見せつつも、大きく頷いてくれた。 「わかった。正直、私は未だに納得していないが……。まぁ、了承の返事を出そう」 「えぇ、お願いします」 「だが、結婚してなにかあったら、すぐに連絡を寄越しなさい。また、テレサをはじめとした数名の侍女。あとは護衛を数名、料理人も連れて行きなさい」  ……テレサをはじめとした侍女や、護衛はともかく。料理人を連れて行くのは、いいのだろうか? 「慣れない場所で慣れない食事をするのは、辛いはずだ。せめて、食事くらい慣れたものがいいだろう」  でも、それが父の気遣いだとわかったから。ローゼリーンは、拒否することなく頷いた。 「できれば、陛下に顔合わせのほうもお願いしよう」 「はい、お願いいたします」  父の言葉に、ローゼリーンは頷いた。  きっと、顔合わせはあるはずだ。ローゼリーンもそう思っていたのだが……。  まさかまさかで、バーグフリートはこの後辺境のいざこざを治めるために、辺境に旅立ってしまう。  その結果、挙式より前の顔合わせは叶わないのだった。
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