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そして、挙式の日を迎えて。
リューデル王国で一番歴史があるという大聖堂。ここは、王族や高位貴族が挙式をする際に使用されている場所。
ローゼリーンはここで初めて夫となるバーグフリートと対面し、永遠の愛を誓った。……まったく、そんな感覚はないのだが。
(だって、バーグフリートさまは私と目も合わせてくださらなかったわけだし)
挙式の際中。彼はローゼリーンを見ようとはしなかった。ずっと別のところを見ていて。
さすがのこれには、ローゼリーンも少しの不満を抱いてしまった。
それから、小規模ではあるものの披露宴を開いた。本来ならば、ローゼリーンは大規模なものを開く立場だ。
しかし、それをほかでもないローゼリーンが拒否したのだ。
『そんな大々的な披露宴など、いりません。身内だけの小さなものがよろしいです』
披露宴の内容を決めるとき。ローゼリーンはそう意見した。
そこには、いくつかの考えがあった。だが、一番大きなものは――バーグフリートに負担をかけないためだ。
(彼は辺境のいざこざを治めたばかり。少しでも、ゆっくりとしていただきたいわ)
後処理の所為で全く会えていないが、ローゼリーンの中ではそれなりにバーグフリートに対する情が生まれていた。
(彼はお忙しい人だものね。だったら、負担は少しでも軽くしたほうがいい)
英雄とは、戦場などに行けば、それなりに相手に負荷を与える立場だ。
けれど、本人だって重荷を背負うことになってしまう。ローゼリーンは、それが心配だった。
だから、大々的な披露宴はやめて、小規模な披露宴を選んだ。
会場には軽食もあったのだが、あいさつ回りで忙しいローゼリーンは一口も口に入れることが出来なかった。
そのため、料理人に頼んで晩餐を用意してもらった。
バーグフリートに必要かと聞いてみれば、彼も頷いてくれた。というわけで。ローゼリーンは彼と共に食事をすることにしたのだが。
(少しでも、お話しできると嬉しいわ)
そう、思っていたのに。
――食事の席で、会話はこれっぽっちも弾まなかった。
◇
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