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(彼は、晩餐を美味しいと思っていらっしゃるのかしら?)
表情をちっとも動かさずに、食事を続ける彼を見ていると、少しの疑問を抱く。
料理人はローゼリーンの実家の者ということもあり、もしかしたら彼には食べなれていない味なのかもしれない。
「バーグフリートさま。もしも、お口に合わないことがありましたら、遠慮なくおっしゃってください」
にっこりと笑みを浮かべてローゼリーンがそう問いかけてみる。が、彼はしばらく間をおいて「大丈夫だ」というだけだった。
(若い男性は味の濃いものを好まれるのかしら? わからないわね)
食事は少し味が薄い。それは、ローゼリーンの好みに合わせてだった。
元より味の濃いものは好まない。父も兄も。同様である。
だが、父に関しては若い頃は味の濃いものを好んでいたという。年齢を重ねるにつれ、胃腸が受け付けなくなったと笑っていた。
(お兄さまは昔からこの味だし、好みもへったくれもないのでしょうが……)
それに、相手は騎士だ。身体を動かしている。だったら、もっとエネルギーを得られるもののほうが……。
なんて考えていると、ぼうっとしてしまって、食事の手が止まっていた。
「ローゼリーンさま。お疲れですか?」
その所為で、実家から連れて来たテレサに心配されてしまう。
ローゼリーンは食事は残さずに食べる主義だ。もちろん、体調の悪い日は除く。
「い、いいえ。違うの。……ただ、少し考え事を」
侍女は普通、食事中の主に声をかけたりはしない。けれど、今日は例外だろう。
テレサは、ローゼリーンのことを心配してくれているのだから。
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