第1章

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「つまりは、好きにしていいということかしら?」  そもそも、同居している空気など気にしなくてもいい存在だ。  ……まぁ、彼ほど図体がデカかったら、まったく気にしないというのは無理そうだが。 「ろ、ろ、ローゼリーンさま……!」  さすがにバーグフリートの態度が心配になったのか、テレサがローゼリーンのほうに近づいてくる。 「あんなお言葉、気にされなくて結構ですわ。大体、ローゼリーンさまは姫さまですのに……」  王族の血を引いている、公爵家のお姫さま。それがローゼリーンだ。  テレサはそう言いたいのだろう。そのうえで、彼の態度が信じられないのだ。 「ローゼリーンさま。私は、抗議に行ってこようと思いますわ。……いくら夫となられても、あれはあんまりです」  実家から連れて来た別の侍女が、息を荒くしてそう言ってくる。なので、ローゼリーンはゆるゆると首を横に振った。 「いえ、その必要はないわ」  端的にそう言って、カトラリーをテーブルの上に戻す。グラスを取って、水を口に運んで。のどを潤したら、彼女たちを見つめた。 「こうなることは、まぁ、よくあることでしょうし」  貴族の夫婦関係など、冷めきっていてもおかしくはない。 「あなたたちが抗議をすることで、この国の英雄の機嫌を損ねるのは、やめたほうがいいわね」  ローゼリーンは現実的な考えの持ち主でもある。自分の幸せと、国の利益。どちらを重要視するべきかは、理解しているつもりだ。 「だから、このことはくれぐれもお父さまやお兄さま、伯父さまのお耳には入れないで頂戴。極秘案件よ」  目の前で指でバツを作って、ローゼリーンがそう告げる。二人は、納得していない様子だったが頷いてくれた。 「と、いうわけだから。……どうやら、私は愛されない結婚生活というものを、送ることになったみたいだわ」  そして、ぽつりとそう呟いた。その声は、何処か弾んでいる……ようにも、感じられた。
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