第1章

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 その後、ローゼリーンは食事を終え、邸宅にある私室へと向かった。  女性らしい色合いの家具が並ぶ中、ローゼリーンは真っ先にソファーにぽふんと腰掛ける。  ローゼリーンのその姿を見てか、控えていたテレサが口を開いた。 「全く、なんなのですか! あのお人は!」  明かに怒りを孕んだ声でそう言って、テレサは腰に手を当てて怒る。  彼女がここまで感情を表に出すことは珍しい。普段は、冷静沈着な侍女なのに……と、心の片隅で思いつつ、ローゼリーンは肩をすくめる。 「ローゼリーンさまを蔑ろにするなんて、たとえ英雄だったとしても許されることではありませんわ!」  ぷんすかという効果音が聞こえてきそうな彼女を見ても、ローゼリーンはなにも思わない。  いや、多分ではあるが。 (人間って、自分よりも感情を表に出す人を見ると、冷静になるのね……)  そういうことなのだろう。  テレサがローゼリーンよりも怒ってくれるから。ローゼリーンは、こうして冷静でいられるのだ。 「まぁ、いいじゃない。とりあえず、落ち着いて」 「これが落ち着いていられますか!」  普段はローゼリーンに逆らうことはない彼女も、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れているらしい。  ……まぁ、それもそうなのだろう。 「けれど、くれぐれもこのことはお父さまやお兄さまには言わないで頂戴ね。伝わってしまったら、どうなるかわからないわ」  ゆるゆると首を横に振って、ローゼリーンがそう言う。テレサは、不服そうながらも頷いてくれた。それに、胸を撫でおろす。 「とりあえず、食後のお茶を貰えるかしら?」  ローゼリーンがテレサにそう言ってみれば、彼女は深々と頭を下げて「かしこまりました」と言ってくれる。そのまま、すたすたと部屋を出て行った。  残されたのは、ローゼリーンただ一人。
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