第1章

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「ローゼリーンさま。バーグフリートさまから伝言でございます」 「……あら、なぁに?」 「本日は別室で休むということでございますが……」  ちらりと侍女がローゼリーンの様子を窺う。その目には、ちょっと複雑な感情が宿っているようだ。  だからこそ、ローゼリーンは頬に手を当てる。 「わかったわ。どうぞごゆっくり休んでくださいと、伝えて頂戴」 「……かしこまりました」  侍女が深々と頭を下げる。  彼女が出て行って、扉がぱたんと閉まる。それを見て、ローゼリーンは大きく伸びをした。 「……うん、伝えてくださっただけ、まだいいわね」  これで、自分も私室でゆったりとすることが出来る。 「挙式に披露宴。あと、あの晩餐。とっても疲れたわ」  この後は、湯浴みでもしようかな……と思っていると、扉がノックされる。今度は、間違いなくテレサの声が聞こえた。 「いいわよ」  ローゼリーンの返事に合わせて、扉が開く。そこには予想通り、ワゴンを押したテレサがいた。 「お茶をお持ちいたしました。本日は料理長に頼んで、レモンをわけていただいたので、レモンティーでございます」  確かにテレサの押すワゴンには、ティーポットとカップ、砂糖のほかに輪切りのレモンがある。  ……ローゼリーンはレモンティーが大好きだ。そのため、嬉しくなってパンっと手をたたいた。 「まぁ、嬉しいわ」  ニコニコと笑うローゼリーンを見るテレサの目が、何処か苦しそうだ。  ……もしかしたら、ローゼリーンが強がっている。そう思っているのかもしれない。  決して、そんなことはないのに。
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