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「ローゼリーンさま。バーグフリートさまから伝言でございます」
「……あら、なぁに?」
「本日は別室で休むということでございますが……」
ちらりと侍女がローゼリーンの様子を窺う。その目には、ちょっと複雑な感情が宿っているようだ。
だからこそ、ローゼリーンは頬に手を当てる。
「わかったわ。どうぞごゆっくり休んでくださいと、伝えて頂戴」
「……かしこまりました」
侍女が深々と頭を下げる。
彼女が出て行って、扉がぱたんと閉まる。それを見て、ローゼリーンは大きく伸びをした。
「……うん、伝えてくださっただけ、まだいいわね」
これで、自分も私室でゆったりとすることが出来る。
「挙式に披露宴。あと、あの晩餐。とっても疲れたわ」
この後は、湯浴みでもしようかな……と思っていると、扉がノックされる。今度は、間違いなくテレサの声が聞こえた。
「いいわよ」
ローゼリーンの返事に合わせて、扉が開く。そこには予想通り、ワゴンを押したテレサがいた。
「お茶をお持ちいたしました。本日は料理長に頼んで、レモンをわけていただいたので、レモンティーでございます」
確かにテレサの押すワゴンには、ティーポットとカップ、砂糖のほかに輪切りのレモンがある。
……ローゼリーンはレモンティーが大好きだ。そのため、嬉しくなってパンっと手をたたいた。
「まぁ、嬉しいわ」
ニコニコと笑うローゼリーンを見るテレサの目が、何処か苦しそうだ。
……もしかしたら、ローゼリーンが強がっている。そう思っているのかもしれない。
決して、そんなことはないのに。
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