序章

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(料理はとっても美味しいわ。……ただ、問題があるとすれば)  自身の対面で、無表情で食事をする男。綺麗に切りそろえられた黒色の短い髪。その目はサファイアのように美しい青色をしているのに、形が鋭い所為で迫力がある。  うんともすんとも言わずに食事をする彼の所作は、少し乱暴だ。  ローゼリーンが彼に視線を向ける。すると、彼の視線が露骨に逸らされた。  内心、「またか」と思ってしまう。 (挙式の際も、披露宴の際も。私のことをじっと見ているくせして、こちらが視線を向けると露骨に逸らされる)  それは、ローゼリーンからすれば面白いものではない。  そもそも、生まれてこの方二十一年。男というものは、ローゼリーンが微笑みかければ照れて顔を赤くする生き物だった。  しかし、この男はどうだろうか。  じっとローゼリーンを見つめる癖に、視線を合わせようとはしない。一見すると挙動不審で、怪しいことこの上ない。ローゼリーンが視線を戻せば、またじっと見つめてくる。  ……が、そこに未練がましい色はない。ただ、じっと観察している。それだけだ。
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