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ローゼリーンの父は、王家の血を引いており、正当な王族の一員である。ローゼリーンの父の兄が、現在の国王。つまり、ローゼリーンは国王の姪っ子でもあるのだ。
身分的には筆頭公爵家の令嬢ではあるが、現在国には姫がいないため、ローゼリーンは実質『姫』のような扱いとなっているのも関係している。
(お父さまがご帰宅早々に私を呼び出すなんて、今までにないことではないのかしら?)
頬に手を当てて、ローゼリーンはそう思う。
ローゼリーンの父は、娘であるローゼリーンにすこぶる甘い。なにをしてもすべて肯定してくれ、欲しいものはすべて買い与えてくれる。年の離れた兄も同様。むしろ、娘のいない国王の伯父でさえ、ローゼリーンにはとても甘かった。
そんなローゼリーンではあるが、母がそれなりに厳しくしてくれたため、そこまでわがままには育っていない。
……本当に、母には感謝しかない。
「なんでも、重要なお話があると……」
侍女は考え込んだローゼリーンに、眉を下げてそう伝えてくる。
……別に彼女が悪いわけではない。そういう意味を込めて、ローゼリーンは笑った。
「いえ、伝言ありがとう。では、お父さまにお会いする準備をするわ。またご帰宅次第、教えて頂戴」
「かしこまりました」
一応父は公爵なのだ。こんなラフな格好で合っていい人物ではない。……もちろん、家族の時間は除いている。
(けれど、執務室に呼び出すということは、公爵としてのお話だわ。……私も、きちんとしなくては)
そう考えて、ローゼリーンは専属侍女のテレサを連れて、庭園を後にした。
もちろん、残っているクランベリーのパウンドケーキは、保存しておいてもらう。
だって、この季節しか食べられないのだ。一切れ残らず、食べてしまいたい。
もしも、他の貴族令嬢が見たら笑うかもしれないし、バカにするかもしれない。が、ローゼリーンはローゼリーンの道を貫くだけだ。
だって、公爵令嬢である以上に。王家の血を引いている以上に。
ローゼリーンは、一人の人間であり、女性なのだから。
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