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トシは頭痛と目眩を感じて、右手で頭を抱えながらうずくまった。
「トシ」と、サラが駆け寄った。
「ごめんなさい。あなたを苦しめるつもりはなかったの」
「謝らないでください、母上」
と、トシは痛みで顔が歪みそうになるのを必死に抑えながら顔を上げた。
「謝らなければならないのは僕の方です。僕は母上に嘘をついてきました。一つ二つではなく、たくさん」
「わかっています。あなたは幼い頃から嘘ばっかりです。でも、とても優しい嘘ばかりだった。最近だとそうね…行商というのは嘘だったのでしょう?私に心配させまいとしたのね」
「……母上には敵いませんね」
「あなたは嘘が上手だけれど、ユアンとハクトは下手なのよ。あなたが行商に行ったわけではないことくらい、あの二人の様子を見たらすぐにわかったわ」
と、サラはウフフと笑った。
「その他にもいっぱい嘘をつかれたわね。でも、私たちもずっとあなたに嘘をついてきたから、あなたを咎める資格などないわ。お願い、白状させて、トシ。きっとこの話が、これからのあなたの人生に必要なことだと思うから」
「………わかりました、母上」
と、トシは諦めた様子で頷いた。
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