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「ユアン様!」
その時、突然バルコニーの護衛兵が叫んだ。
「ココラルがすごい勢いでこちらに飛んできております!」
ユアンがハッと顔を上げると、確かに一匹のココラルがまっすぐ城に向かって、いや、ユアンのいるバルコニーに向かって飛んできていた。
「あれは…」
ココラルはあっという間にバルコニーから王の寝室に飛び込むと、ゆっくりと床に着地し、羽をしまってユアンの元に駆けつけた。
「やはり、トウか」
ココラルが部屋に入ってきたことで緊張が走った護衛兵たちに、ユアンは「大丈夫だ」と言い、トウの頭を撫でた。
「どうした、トウ。シュウに何かあったのか?」
トウの首には白い布が巻かれており、トウはそれを取るようにとユアンに促した。ユアンはその白い布を取ると、中に入っていた手紙を取り出した。
「ユアン、それは確か君の息子のシュウが助けたココラルだったな。何かあったのか」
「いえ、ルシフ様。ご心配には及びません。単なる私事です」
と、ユアンは手紙をたたんで懐に押し込んだ。トウは早足で部屋の中をぐるりと歩いた後に再び羽を広げ、あっという間にバルコニーから外へと飛び出して行った。
「驚かせてしまい、申し訳ありません」
と、ユアンはルシフの枕元に跪いた。
「私の最期の時をココラルが知らせに来たのかと思ったのだが、な」
と、ルシフは笑みを見せた。
「そんな、滅相もない」
「良いのだ、ユアン。そんなことよりも、急ぎの用事なのであろう?早く行ってあげなさい」
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