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聖剣 ④
「惜しい男を亡くしたもんじゃ」
リンビルは窓際で後ろ手に立ち、外を眺めながら呟いた。
カインの遺体は、診療所の一番奥の部屋に安置されていた。
「カイン様は、とても強くて優しくて、兵士たちの憧れでした。私の兄も、この事を知ったらどんなに悲しむか…」
と、ルイは溢れ出てきた涙を袖で拭いた。
「そうか、ルイの兄さんも軍に入っておったのぉ」
シュウは、カインが毒矢で命を落としたということを二人に伝えたきり、一言もしゃべらなくなってしまっていた。壁に背を当てて座り込み、じっと前をみつめていた。そして、そんなシュウを包むように、トウが寄り添って座っていた。
「来られたようじゃ。ルイ、案内をして差し上げなさい」
と、外を眺めていたリンビルが言った。
程なくして、ユアンとシュウの兄ハクトが、ルイに案内され部屋に入ってきた。二人は、中央のベッドに横たわっているカインの姿を目にすると、揃って息をのんだ。
「カイン、すまない」
ユアンはカインに近づくと、冷たくなったカインの手を握った。ハクトは悔しそうに唇を噛み、両手の拳にぐっと力を入れた。
「奇妙なことじゃの、ユアン殿。クスラ国の軍服を着たカイン殿が、50年に一度使われるかどうかという稀少な毒で命を落とすとは。モサビの毒が使われて命を落とした者を見るのは、わしが生きている中でも初めてのことじゃ。それほど、モサビの毒は貴重で量も限られている。国を揺るがす大事でも起きない限り使われることはない。現に、以前モサビの毒が使われたと噂されたのは、クスラ国の先先代の国王が、国を二分して争っていた反勢力の長を暗殺するのに使われたというものじゃった。そんな毒をなぜカインに使ったんですかな」
「リンビル先生…ご迷惑をおかけしました」
「いや。シュウがカイン殿を見つけたことが、不幸中の幸いじゃよ」
ユアンは部屋の隅でじっとしているシュウに近づくと、
「シュウが、カインの最期を看取ったんだな」
と、話しかけた。7年ぶりに会う父と兄を見ようともせず、シュウは俯いた。
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