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聖剣 ⑥
辺りが暗くなり、村に鐘の音が6回響いた。診療所には、ロニがシュウを訪ねて来ていた。
「ごめんね、今日はもう戻らないと思うわ」
ロニが来たのは、シュウがカインの遺体を馬車に乗せ、ユアンとハクトと共に城のあるヨオ都へ向かったすぐ後のことだった。
「これ、親方の奥さんからです」
と、ロニが差し出したのは、リンメと呼ばれる甘い焼き菓子だった。
「ありがとう。シュウ先生は甘い物が好きだから、すごく喜ぶと思うわ。親方の具合はどう?」
「先生のおかげで、痛みはなくなったみたいです」
「それは良かったわね」
「先生、甘い物が好きなんだったら、バイルの実も好きかなぁ?」
「えぇ、大好きよ。でもそれは駄目よ、ロニ。バイルは高い木だし、あの木には影のいたずらっ子が潜んでるって、学校で習ったでしょう?子供は登ってはいけないのよ」
「僕はもう子供じゃないよ」
と、14歳になったばかりのロニは言った。それに木登りはすごく得意なんだ、とロニは言おうとしたが、
「いいえ、駄目よ」
と、ルイが先に言ったので、黙ったまま頷いた。
「ロニは明後日のベネガに行くの?」
「親方が怪我をしたから、少しの間、仕事は休みになったんだ。最近ずっと忙しかったから、みんなも少し休めって、親方が。だからベネガに行けることになったんだ」
「誰と行くの?兄弟子さんたち?」
「うん、みんなで行くんだ」
「よかったわね」
「ルイさんは行かないの?」
「診療所があるから。それに、シュウ先生もベネガが終わるまでヨオ都にいるしね」
あまり城には戻りたがらなかったシュウを、ユアンが母に会うようにと説得して連れて帰ったのだった。
「じゃあ、ルイさんにお土産買ってくるよ」
と言うと、ロニは診療所を後にした。
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