聖剣 ⑦

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「トシの目は、痛みと共に視力が失われていく病におかされているのです。リンビル先生でも治す方法がわからない。トシの目は、いずれ見えなくなってしまうのです」 「なんと…」とユアンは絶句し、ハクトは険しい表情で首を横に振った。 「そんな大事なことを、なぜ言わなかったんだ」 とハクトが言うと、トシは片膝をついて跪いた。 「申し訳ありませんでした。私はお役に立ちたかったのです、父上やこの国のために。視力を失ってしまう前に…どうしても…父上に御恩をお返ししたかったのです。私はまだ何も…何も成し得ていない…」  ユアンは、トシの肩を持って立ち上がらせると俯くトシの顔を覗き込みながら言った。 「恩返しなど必要ない。お前はいつもそうだ。遠慮するなと言ったはずだぞ。お前は俺の息子だ。お前は頭脳明晰で武術の腕も良い。国のためになりたいと密偵を志願してくれた時は、本当に誇らしかった。しかし、そんな病があるなら話は別だ。これからは家族のそばにいるんだ。わかったな」 「はい」と、トシは頷いた。 「カイン殿やトシを潜らせて、クスラ国の何を探っておられたのですか、父上」  シュウが尋ねると、ユアンは執務机の鍵のかかった引き出しを開け、中から一通の手紙を取り出してシュウに差し出した。  それは、先のクスラ国王ウルスムの側近、ケイゼルからの手紙だった。 「私が読んでもよろしいのですか?」 「ああ。4年前に届いたのだ」
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