聖剣 ⑦

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 ユアンの元に、先のクスラ国王ウルスムの側近、ケイゼルからの密書がとどいたのは、4年前のことだった。  ウルスム王が毒殺され、しかも首謀者は息子のナバルだという衝撃的な内容から始まる密書には、ナバルの残忍な性格、領土を広げることへの野心、そして聖剣の使い手であり、全世界から慕われる英雄ユアンへの強烈な嫉妬心について、事細かに記されていた。  …このままでは、世界がクスラ国の脅威に晒される日が必ず来るであろう。そうなる前に君にナバルを止めてほしいのだ。ナバルを止めることができるのは、君しかいない。恥ずかしながら、私は逃げてしまった。ナバルの執着心の強さを考えると、どんなに逃げようと私を殺すまで追いかけてくるだろう。しかし私は諦めない。必ず君にまた会うことを約束する…  ケイゼルはユアンの大切な友人だった。ユアンが聖剣の使い手となる数年前、旅をしながら剣術の腕を磨いていた頃に二人は出会った。ケイゼルは学問で身を立てようとしており、そのために諸国を周り見識を深めているところだった。 「結局、ケイゼルの居場所は今だにわからない。生きているのか死んでいるのかさえわからない。クスラ国で何が起こり、何が起ころうとしているのか、それを探るために密偵を買って出たくれたのがカインとトシだ」    カインとトシはクスラ国の隣国タラムの商人として、それぞれ別々にクスラ国に入った。カインは陶磁器をトシは布地を扱い、商売をしながらクスラ国の情勢を探った。
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