7人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「私がクスラ国を出たのは半年前です。ナバルの恐怖政治で町中に監視の目はありましたが、特に目立った動きはありませんでした。クスラ国からここまでは、馬で5ヶ月ほどかかりますから、私がいなくなった1ヶ月ほどの間にクスラ国で何かが起こったということになります」
「カイン殿はなぜ軍服を着ていたのでしょうか。商人としてクスラ国に潜伏していたはずですよね?」
「軍服?」と、トシは怪訝な表情で言った。「軍服を着ていたのですか?」
「そうだ」と、ユアンは頷いた。「クスラ国の軍服を着ていた」
「ではカインは、クスラ国の軍服を着たまま約半年をかけてこの国に戻ってきたということですか?」
と、トシは首を傾げた。
「変ですね。逃げるのなら、もっと目立たない格好を選ぶはずです。クスラ国はどの国からも警戒されていますから、関所を何事もなく通ることができたのか、とても不可解です」
「ソルア(影を操る者)が関係してはいないでしょうか?」
と、シュウが言うと、ユアンは驚いた表情で腕を前に組み、椅子に腰掛けた。
「なぜ、そう思う?」
「村の長老から聞いた話ですが、ソルアの中には国をまたぐほどの距離で物を飛ばせる者がいるそうです。まるで子供が球を投げ合う遊びのように、ソルア同士で物を投げ合うのだそうです。カイン殿は、影の住人がナバルに取りついたと言っていました。ソルアが何らかの形で関係している可能性はあるのではないでしょうか」
最初のコメントを投稿しよう!