聖剣 ⑦

6/6

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「しかし、この国にそういう者は一人もいないはずだぞ」 と、ハクトが言った。ユアンは腕を組んだまま険しい顔をしていた。  30年前、国王は自国のソルア全員に追放命令を出した。ソルアは元来、影の住人が光の世界に出てくるのを抑制し、光と影の均衡を保つ存在である。しかし、国の危機をもたらした一人のソルアのために、国王はソルアを忌み嫌い、城の中でソルアという言葉を発することさえはばかれるようになった。 「ソルアは見た目ではわかりません。皆、その能力を生業にしているからソルアだと分かるのです。30年前この国から追放されたのは、その時点でソルアとして活動していた者とその家族です。ソルアは遺伝し、能力が受け継がれていくからです。だから、もし生業とはしていないソルアが潜んでいたとしたら、それは誰にもわからないはずです」 「おい…」と、ハクトは顔をしかめた。「そんなこと、あまり大きな声で言ってはならん」 「いずれにせよ、クスラ国で動きがあったことは確かだ。クスラ国の動きを探ると共に、戦闘体制を整えねばなるまい」 と、ユアンは立ち上がり壁に描かれた世界地図の前に立った。 「戦争になるということですか?」 と、シュウが言った。 「その前に、ナバルを止めたいものだがな」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加