聖剣 ⑧

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聖剣 ⑧

 ベネガの日は雲ひとつない晴天となり、朝から多くの国民がこの日にだけ開放されている城の門をくぐっていた。  サラは式典に参列する三人の息子たちを眺め、目を細めた。皇太子ティムの横にハクトとトシ、国王の専属医師の隣にシュウが並んでいた。一般の列に加わろうとしていたシュウを官僚たちが引き留め説得し、その位置に落ち着いたのだった。  それにしても本当に…うちの殿方たちは皆、揃いも揃って隠し事が下手ね…  7年ぶりに家に帰ってきたシュウに大いに喜び、思いきり抱きしめたサラだったが、時折シュウが見せる憂いた表情に心がざわついた。何か困ったことがあったに違いないとサラは思っていた。  そしてそれが個人的な悩みではないということをサラが勘づくのに、そんなに時間はかからなかった。ユアンは何を話しかけても上の空だし、ハクトは家に帰ってこなかった。ハクトは心配事がある時には決まって、家に帰らず城にこもってしまうのだ。  そしてトシも…トシはすぐに嘘をつく。それは、大切な人を傷つけたくないという優しさからくる嘘だ。トシの嘘を見抜くのはサラでも難しい。しかし今回は、シュウと目が合わないように避けているような素ぶりをトシがとっていたため、トシも何かを隠していることがサラにはわかった。 「奥様、今年のベネガは、ずいぶんたくさんの兵隊さんがいらっしゃいますね」  式典の最中、サラの後ろにいた侍女のアンナが言った。アンナが言った通り、今年のベネガは多くの兵が警備にあたり、怪しい者がいないか目を光らせていた。 「新国王の即位式も行われる特別なベネガですからね。警備は厳重にせねばなりません」 と、サラは答えたものの、警備隊から伝わる緊張感が、それだけが理由ではないことを示唆していた。きっと、ユアン達の悩みと関係しているに違いないとサラは思っていた。
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