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式典は厳かに執り行われ、何の混乱もなく無事に終わった。王族方は城の中に戻り、一般の人々は次第に城の外へと出始めていた。城壁の外側では酒や食べ物が振る舞われ、たくさんの人々で賑わっていた。
シュウは庭園にロニの姿を見つけると笑顔で手を振った。ロニは満面の笑みでシュウに駆け寄り、背負っていた袋からバイルの実を取り出した。
「先生に会えて良かった。これを渡したくて」
「わざわざ、持ってきてくれたのかい?」
と、シュウはロニからバイルの実を受け取った。
「先生にお礼がしたくて。先生、甘い物が好きって聞いたから」
「ありがとう、大好きだよ。立派なバイルだね。ロニがこれを取ったの?」
「そうだよ。危なかったんだ。死ぬかと思った」
「まさか、影のいたずらっ子に?」
「うん。実を取ろうとした時に、頭の上にココラルが3頭やって来て、くるくる回りながら吠えたんだ。そしたら急に枝が折れて落っこちたんだ。あれは影のいたずらっ子のせいだね」
「落ちたって…怪我は?大丈夫だったのかい?」
「うん、この通り」と、ロニは両手を広げてみせた。
「知らないお兄ちゃんが助けてくれたんだ」
「知らない…どんな人だった?」
「不思議なお兄ちゃん。僕をかばって怪我をしたのに、あっという間に治っててさ。あんな人いるんだね」
「ひょっとして、弓矢を持っていたりはしなかった?」
「ううん、何も持ってなかった。でもヨオ都に来る途中みたいだったから、ここに来てるかもしれないよ」
と、ロニが言った時だった。
カンカンカン、カンカンカンと、城の上方から緊急を告げる鐘の音が鳴り響いた。
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