再会

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 トシは7年前、17歳のシュウがリンビルの元で医術を学ぶ決心をし、家を出ることを申し出た時のことをよく覚えている。  シュウの父ユアンはフオグ国軍総督であり、国の危機を救った英雄、そして聖剣の使い手として国内外に知られている。  先の戦で父を亡くし、母親もその前に病気で亡くしていた幼いトシは、父の親友であったユアンに引き取られ、ひとつ年下のシュウと二つ年上のハクトと三人兄弟のように育ってきた。  シュウとハクトの母サラは、自分の子供達と同じように深い愛情でトシを包んでくれた。シュウもハクトもトシも、偉大な父に憧れ、お互い切磋琢磨して剣や弓矢の腕を上げてきた。  だから当然のように、三人とも父の率いる軍隊に入り、国王とこの国を守るものだとトシは思っていた。  しかしある日、シュウは突然医者になると家族の前で言い出した。あれは、フオグ国独立記念の式典があった日の翌日のことだった。  兄のハクトは頬を紅潮させながら激怒した。片ひざをついて許しを請うシュウの前に仁王立ちし、自分と勝負をしろ、と剣を抜いてシュウの目の前に突きつけたのだ。  母のサラが助けを求めるようにトシに近づき、手を握りしめた。その手を握り返しながら、トシは事の成り行きをじっと見つめていた。  シュウの言い出したことに驚きはしたものの、彼らしいともトシは思った。シュウは軍人になるにはあまりに優しすぎると日頃から感じていたのだ。  しかしハクトの怒りは大きかった。あまりに大きすぎて自分で自分をコントロールできていないようだった。  張り詰めた空気の中、ユアンはにこにこと笑いながら二人に近づくと、剣を握りしめているハクトの腕を優しくつかんで剣を下ろさせた。ハクトが納得できないと怒りの矛先を父親に向けたが、ユアンは笑って首を横に振った。 「シュウ、それがお前の進むべき道だと信じるなら、遠慮することは何もない。我々がそれを邪魔してはならないのだよ、ハクト」  
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