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「僕が隠している?一体、何の話ですか?」
サラは手を離すと、トシの目をじっと見つめながら言った。
「尋ねてくれてもいいのよ、あなたの本当のお父様のことを」
「母上…」
トシはサラの視線から逃れるように下を向いた。
「僕が十歳になる頃に教えてくれたではありませんか、父は勇敢な武将であったと。隣国のジニア国にヒバ国が攻めて来た際、ジニア国の援護に向かった父は、矢を全身に受けながらもジニア国の要人を守ったと」
「そうね」と、サラは頷いた。
「それは嘘ではないわ。でも…ソルアは、二十歳をすぎる頃にその能力が目覚めると言われている。あなたは、もう二十五歳ね」
トシは慌てた様子で立ち上がると、部屋の壁際に背中がつくまで後退りした。
「あなたは、自分の身体の変化に気付いていたはずよ。いつか、いつか話さなければ…そう思いながら月日が経ってしまった。ユアンと一緒に、ずっと悩んでいたの。だってあなたは、とても優しい子だから。自分のことはそっちのけで、家族や友人のために行動する子だから。もし本当のことを知ってしまったら、一体どうなってしまうだろうかと心配で、なかなか言い出せなかった」
サラはトシに近づきながら言った。トシはそれを拒むように首を横に振った。
「やめてください。それ以上は」
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