ポニーテールとバトン

明日、私は結婚する。

「今まで育ててくれてありがとう」のお礼の言葉を、ついさっき両親に伝えたばかりだ。

父は必死に涙を堪え、うん、うんと頷く。そんな父の背中に手を置いて、母は静かに微笑み「由奈、幸せにね」と声をかけてくれた。

高校生の弟は、改まって向かい合う私たちを見て、ニヤニヤと笑っている。

私は「何、笑ってんのよ。あんたもいずれ、将来お嫁さんになる人の親御さんに、娘さんをくださいって挨拶する日が来るんだからね」と言いながら、弟にデコピンをお見舞した。

「痛てぇ」弟はおでこを擦りながら「姉ちゃん、おめでとう」と照れくさそうに言った。

「ありがとう。あんた今日は、ゲームしないで早く寝なさいよ」

そう声をかけながら、2階の自分の部屋へと戻った。