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「くっ……エド! 俺のアシュラサマーはどこだ!?」  エドは肩にかかっている浮き輪をギュムギュムと揉みながら、気まずそうにミゲルに視線を向けた。 「……実はな、お前のアシュラサマーは起動しなくなっちまって……機体をスクラップしてカンノーンの内部にリサイクルしたぜ」 「すっ、すすすすスクラップぅ!?」  エドの爆弾発言にミゲルはブチギレた。彼の顔はまさに阿修羅の憤りの表情のように怖かった。 「エドっ!! 俺のアシュラサマーが起動しなくなったってどういうことだ!?」 「ミゲルって、戦闘のたびにアシュラサマーの手足を気軽に吹っ飛ばすだろ? お前っていつも無茶するんだよなぁ」 「うっ……」  エドの痛い指摘がミゲルの怒りを一気に沈めた。そして、エドの容赦ない指摘がさらに続く。 「その無茶が積もりに積もって、コックピットの操作盤が完全にイカレちまった。ぶっちゃけ取り替えとシステムの初期化が面倒だ。だから俺は『慎重に戦え』ていつも注意したんだよ」 「うぐっ……」  アシュラサマーが壊れ、スクラップにされた。つまりアシュラサマーは死んだ。  ミゲルはショックだった。なぜなら彼のHSのコックピットの秘密の場所に、大事にしている大仏フィギュアを隠していたからであった。  戦闘は長く辛く苦しいもの。彼は小さい頃から集めていた大仏フィギュアを眺め、気持ちを落ち着かせていた。  ミゲルは泣きそうになったが、堪えた。その顔はまさに阿修羅の悲しみの表情のように切なかった。 「ミゲル、そんな落ち込むなって。お前のHSなら目の前にあるだろ?」 「目の前?」  エドの安っぽい励ましを受け、ミゲルは前方に視線を向けた。そこにはおよそ1000本のアームを持つ黄金のHSが光り輝いていた。  その神々しい輝きを見て、ミゲルは完全な落ち着きを取り戻した。その顔はまさにお釈迦様の説法を聞いた時の阿修羅の表情のように穏やかだった。 「……どう考えても操縦しにくそうなカンノーンに乗れと言うのか?」 「まあまあ。とにかく乗ってみろって。カンノーンの筐体はお寺のお坊さんに祈祷してもらった貴重な金属を使用しているから、お前の無茶な操縦でも100年は耐えられるはずだ」  エドはニッコリ微笑んだ。
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