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腐敗が真実を抱いて(1)
観音開きのドアが開いたため、モコモコしている使い魔を抱っこし、厚いガラス製の窓から建物の内部を見ようとしていた娘はビクッとした。
ドアから出てきた女は相手へ気付いた。
「あれ…?もしかして、ここにご用かしらー?」
娘「あ、は、はい。魔法図書館って…どんなところなのかな…って、思って…」
女「…そ〜う。おじょうさんは……もしかして、魔法使いを目指しているのかしら?」
娘「はい!魔法をきわめようと思って、故郷から出てきました!」
女「…うんうんうん…そうか、そうか。それはステキなことね。私たちもあなたのような若い人がいてくれて助かってるわ〜。……けれど〜残念。今日ね、ここは休館日なの〜〜」
娘「えっ……そうなんですか……あの、おねえさんは?休館日でも、ここから出てきましたけど……」
女「私?…私は、ほら…魔道審査官なの。検閲が済んだ書物を運んできたのよ〜。……コレが目印だよー」
女は身を屈(かが)め、上着の襟に付けられたバッジを娘へ見せた。
「……ね?シンボルマークには気をつけてちょーだいね〜うっふっふっ…」
にょろにょろとした怪しい蛇がデザインされたそれを指さした女は微笑んだ。
「……へ〜〜〜初めてこんなの見ました……」
娘がバッジを興味津々に見つめると、抱かれていた使い魔がぴょんと女へ飛びついた。
「ふぁ、うふふ、もこもこもこもこ、けりけりけりけり…よーしよーし…」
両手で受け止めた女は使い魔をなでなでした。
「あわわ、ご、ごめんなさい…」謝る娘に女は首を左右に振った。
「いいの、いいの。……ん、うん、うん。なでなで……よしよし……。やさしいコね〜。よくあなたになついてる。ん〜〜けりけり〜…あなたに注意してって、言ってるわよ〜このコ〜」
使い魔をなでつつ、女は言った。
娘「?ちゅうい?……あたし、ロジーナっていいます。そのコは、トゥルースです。…おねえさんのお名前を教えてもらえますか?」
女「あーー、またやっちった。私ね、何でも正直に喋っちゃうのに、こっちの名前をいうのが遅れちゃうクセがあって〜。わ、わ、わ、私は、ゔぇっ、ゔぇゔぇゔぇっ、ヴェース、ネススス…なでなで…なでなで…けり、けり…なで、なで〜〜」
ロジーナ、と名乗った娘「べべえすねすす??」
ヴェースネス、と名乗った女「…ょ、よろこんでるわ〜、このコ。私の本性に気付いているのかな〜〜警戒して蹴りつけてきて、元気いっぱいね〜。……ロジーナちゃんは、記録用の魔導書は持ってるー?」
ロジーナ「あ……。まだ、持ってません……これまでは自分でノートに呪文かいて、おぼえてました……」
ヴェースネス「…あら、そうなの〜。……それは問題ね。私たちが魔法を使った者を追跡して特定して監視して、犯罪者に仕立てられないと困るからね。……本当に魔法使いを目指すのなら、持ってた方がなにかと便利よ〜うっふっふ〜。よーし、なでなで…そうだ!よかったら、私があなたへ無料でプレゼントしてあげよっかな〜うっふっふっふっふ〜」
ロジーナ「え……。い、いいんですか!?で、でも…いきなり、そんな……」
ヴェースネス「いーのよ。無料だし、大量に作って余ってるんだから。自発的に犯罪者を志してくれる方にはサービスしないとねぇ〜。……あんなもので、愚かな民を管理できるんなら御安(おやす)いもんよ。ま……私ってよりは、デプラビティからもらえるっていった方が、正しいか〜うっふふふ〜」
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