◆課題6_忘れ物「水筒」

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◆課題6_忘れ物「水筒」

人 物 多田良美(25)派遣社員 川村佑太(36)部長 岸純一(30)社員 ○キタヨシ会社のオフィス・中    机の上に、小花柄の水筒が置いてある。多田良美(25)がパソコンでメールの返信をしていると、川村佑太(36)が近寄る。 川村「多田さん、職場には慣れてきた?」 良美「はい、少しずつ……ですが、まだわからないこともたくさんあるので、勉強していきたいと思います」 川村「そんなに急がなくても大丈夫だよ。多田さんは、素直でテキパキと働いてて優秀だし。君には期待しているよ」 良美「恐れ入ります」    良美が遠慮がちに微笑む。 〇キタヨシ会社のオフィス・中(夕)    岸純一(30)が小花柄の水筒を掲げて大声を出す。 岸「すみませーん!この水筒、給湯室に置きっぱなしになってたんですけど、どなたのですかー?」 川村「あ、その水筒、確か多田さんのだったような」 岸「今、多田さんいます?」 川村「もう帰っちゃったから、明日僕が渡しておくよ」   川村は岸から小花柄の水筒を受け取り、給湯室で中身を洗って布巾で拭き、多田の机の上に置く。 〇キタヨシ会社のオフィス・中(朝)    机の上に小花柄の水筒が置いてあるのを良美が見つけると、口に手を当てて目を見開く。その様子に気付く川村。 多田「あ……!」 川村「あ、それ昨日忘れちゃってたみたいだから、洗って置いておいたよ」 多田「お手数おかけしてしまってすみません!ありがとうございます……!」 川村「いいよいいよ、誰にだって忘れ物はあるさ、気にしないで」 〇キタヨシ会社のオフィス・中(夕)    岸が困った顔で小花柄の水筒を持ち、川村の席まで来る。 岸「部長、また多田さんが水筒忘れてました」 川村「これで三回目か……。もう、洗わなく ていいか」   川村は苦笑いした後ため息をつく。 〇キタヨシ会社のオフィス・中(朝)    机の上に小花柄の水筒が置いてあるのを良美が見つけると、ため息をついて 肩を下ろし、頭を抱える。良美は水筒を手に取り、川村の席まで行く。 良美「申し訳ございません。また、忘れてしまいました……」 川村「さすがに、忘れすぎじゃないかな?」 良美「すみません……自分でも、何故水筒だけ忘れてしまうのかわからないんです」    神妙な面持ちで言う良美の姿に、川村は目を丸くして吹き出してしまう。
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