◆課題8_魅力ある伯母さん「意外な一面」

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◆課題8_魅力ある伯母さん「意外な一面」

人 物 星川千鶴(35)フリーのライター 野地千尋(30)千鶴の妹 野地一恵(11)千尋の娘 外国人女性 ○駅の改札口・外(朝)    桜が散り始めている。ベージュのスーツを着た巻き髪の野地千尋(30)と、薄ピンクのワンピース姿の野地一恵(11)が並んで立ってキョロキョロしている。千尋は腕時計を見る。ジーパンにTシャツ姿の星川千鶴(35)が慌てて走ってくる。一恵が気づく。 一恵「あっ!お母さん、おばちゃん来たよ」 千尋「もう、お姉ちゃん!今日ぐらいは遅刻しないでよ!」 千鶴「ごめんごめん!あとは任せて!弟君のランドセル姿楽しみにしてる!」 千尋「調子いいんだから。じゃあ、入学式行ってくるから、あとはよろしくね。一恵、あんまりわがまま言わないようにね」 一恵「はーい。行ってらっしゃい」    千尋は小走りでヒールを鳴らしながら去る。千尋が見えなくなったのを確認 すると、千鶴は一恵にニヤリと笑う。 千鶴「千尋はああ言ってたけど、こういう時ぐらいわがまま言っておかなきゃ損!さ、行きたいとこなんでもいってちょーだい」 一恵「さすがおばちゃん!あのねー、クレープ屋さんに行きたい!」 千鶴「おっけー!クレープと言ったら、表参 道!あそこはクレープの激戦区だからね」 一恵「そうなの?」 千鶴「ふふん、そこんところ詳しいから、案内してあげる!任せなさ~い!」    千鶴と一恵は笑いながら改札の中へ通る。 〇表参道駅千代田線地下改札口・中    多くの人が行き交い、混みあっている。    千鶴はスマホに表示されている地図を見ながら、しかめっ面で考え込む。一恵はキョロキョロと辺りを見回す。 千鶴「うーん……竹下通りに出るにはどの出口だっけ……」 一恵「え?おばちゃん、詳しいんじゃないの?」 千鶴「うーん、しばらく来てないから、目印とか色々変わっちゃっててちょっとわかんないかも」 一恵「しばらく、ってどのくらい?」 千鶴「十年ぐらい来てないかな」 一恵「ええ……!全然『しばらく』じゃないじゃん!」 千鶴「いや、でも十年って意外とあっという間なのよ!一恵も年を重ねれば……」 一恵「もういいから、早く探して!」    一恵は千鶴の背中をポカポカと両手で叩き、千鶴を急かす。 〇表参道の路地    千鶴はスマホの地図を見ながらあちこちを指さして歩く。一恵は眉間に皺を寄せて千鶴を睨む。 一恵「本当にこの辺にあるの?お腹すいたよ。」 千鶴「大丈夫、もうすぐつくから!」 一恵「それ、さっきも言ってた……」    一恵は睨み顔から呆れた顔に変わる。路地を進んだ先に、外国人女性が千鶴と同じようにスマホを見ながらウロウロしている。千鶴と一恵を見ると、こちらに向かってくる。 外国人女性「(英語で)すみません。竹下通りに行くにはこちらで合ってますか?」    外国人女性は、スマホの地図の画面を千鶴に見せる。一恵は二人から少し離れ、控えめに見つめる。 千鶴「(英語で)ごめんなさい、私達も実は迷っていてわからないんです」 外国人女性「(英語で)そうですか、お互い大変ですね。ありがとうございました」    外国人女性は千鶴に手を振って、来た道を戻っていく。一恵は目をぱちくりさせ口を開けたまま、千鶴を指さす。 一恵「おばちゃん、英語話せるの……!?」    千鶴は得意げな顔でピースをする。
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