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(賞をちょうだい……
妄想コンテストの……
賞をちょうだい……
佳作でいいからさ……
お願いだよ……
妄想コンテストの賞をちょうだい……)
「はっ!」
私は布団から飛び起きた。まだ夜だ。寝苦しい夏の夜で室温は27度なのに、寒気がする。
「はあ、またか……このところ毎晩だ」
私は小説サイト「エブリスタ」で編集長をしている。エブリスタでは、月2回「妄想コンテスト」という短編小説賞を開催しているのだが、ここ最近、「妄想コンテストの賞をちょうだい……」という声が夢の中でひたすら聞こえてうなされているのだ。
「うーん、夢の中で声が聞こえてくるということは、私が疲れているのかなあ」
エブリスタの編集部は少数精鋭だ。編集長の私も審査に参加している。妄想コンテストは月2回の開催の上、毎回応募作は500作はある。編集部で手分けして応募作を読んでいるとはいえ、毎日膨大な量の短編小説を読むことになる。
眼精疲労をケアする目薬、サプリ、充電式のアイマスクは手離せない。
そして、審査するというプレッシャーからの心労もあった。
私の見る目がないばかりに素晴らしい作品を落選させているかもしれない。
変な作品を受賞させると小説サイトとしての評判にかかわる。
少し考えるだけでも疲れている要因はいろいろ思い当たる。
「まだ朝まで時間はある。寝よう」
疲れているなら尚更だ。
私は再び眠りについた。
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