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※やっぱり俺には恋愛は向いてないみたいです
※伊織side
演劇部に臨時で参加してから二日目のランチは詩音さんと二人でだった。
貴哉も誘ったけど、どうやら鬼の副部長と一緒に食べるらしい。何だかんだ上手く行ってるみたいでちょっと笑えた。
詩音さん行き付けのカフェは若い女の人が多くて男子高校生の俺達二人は少し浮いている存在だった。
「ここのコーヒーがとても美味しくてね。部活の後は良く寄ったものだよ」
「詩音さんなら似合いますね。俺にはちょっとお洒落過ぎるかな」
「そんな事はないだろう。いーくんこそいろんな女性とお洒落なお店に出向いてるのでは?」
「はは、俺こう見えてほぼ恋愛経験無いですよ」
「いーくんはモテるのに意外と真面目だよね。だから貴哉くんの事を気に入ってると知った時は驚いたね。あの子の事を好きになる理由は分かるけどね」
貴哉の事を神だと言う詩音さんは嬉しそうにニコッと笑った。
薗田詩音。三年生で見た目も性格も綺麗が似合う男。俺と詩音さんはたまに遊びに行く仲で友達だ。独特な自分の世界観を持っていて少し変わってる所もあるけど、面倒見も良くて周りからは慕われている。
詩音さんは食後のコーヒーを飲みながら機嫌良さそうに話し出した。
「でも貴哉くんには愛する彼がいるんだろ?奪う気なのかい?そんないーくんを見るのも楽しそうでいいけど。あ、何か降りて来そうだな♪」
「相変わらずな人ですね詩音さんは。奪う気でしたがどうですかね。やっぱり俺に恋愛は向いてないみたいです」
「そうか。いーくんが恋人を作らない理由、聞いてもいいかい?」
「あまり人に話せる内容じゃないですね」
「それは残念だ。ならいーくんの心に閉まっておくといい。それにしても貴哉くんの彼にも一度会ってみたいものだね。神を射止めるなんて、どんな素敵な男なんだろう。遠目でしか見た事がないからね」
「見た目は綺麗ですよ。ちょっとやんちゃそうな若者って感じです。性格は良く分かりませんが、意外と真面目かもしれません。あと、やきもちやきです」
「あはは、それじゃあ彼はやきもちをやくのに忙しいだろうな。貴哉くんはモテるだろうから」
「ところで貴哉の指導役を二之宮にしたのって詩音さんですよね?一見合わなそうな二人なのにどうしてあの組み合わせにしたんですか?」
「二之宮くんの性格はいーくんも知っているだろう?彼は真っ直ぐ過ぎて頑固な所がある。それは部活での活動にも出ててね。あまり周りと上手くやれていない節があるんだ」
「良くそんな人を次期副部長に任命しましたね」
「彼には素質があるからだよ。凄く不器用だなと思う。ああ見えて人一倍責任感が強くて仲間思いなんだ。やり方次第では部長になれる器を持っていると思うよ」
「確かに、何だかんだ貴哉の事面倒見てますしね」
「ふふ、きっと二之宮くんは嬉しいんだよ可愛い後輩が下についてくれて」
「お互い嫌ってそうでしたけど?」
「二之宮くんは演技力もあるから、二年になった時、一つのチームのリーダーに選んだんだ。彼は凄く張り切って頑張ってみんなを引っ張っていこうとしていたよ。でもそれに応えられる者はいなかった。彼の厳しくて自分の意見を押し付けてしまう所にやられた部員が次々と辞めて行ったんだ。それはまずいと思ってすぐにリーダーから外したよ。その出来事が彼にはショックだったみたいでね」
「あー、二之宮を苦手なのって演劇部以外にもいますからね」
「本当に勿体無いよ彼は。だから今回貴哉くんの指導役に指名したんだけど、どうやら成功だったみたい♪」
「でも貴哉は仮でしょ。文化祭終わったら居なくなりますよ。そしたらどうするんです?」
「それまでに成長してくれる事を祈るよ。貴哉くんにいい刺激を貰って一皮剥けて貰えればと思っているよ」
さすが詩音さんだ。何も考えずに二之宮を貴哉に付けた訳じゃ無さそうだな。
「貴哉もめんどくさがりだし、すぐに嫌な事から逃げようとする癖があるので、二之宮から何か学べればいいです」
「そうだね。きっと二人なら大丈夫だよ」
「そう言えば明日の親睦会ですけど、全員参加なんですか?そうなると大人数ですよね」
「いや、明日のはメインどころだけでやるつもりだよ。夏休み中にBBQ大会を開くんだけど、それには全員参加の予定だよ」
「それは楽しそうですね。ボラ部もやろうかな」
「是非いーくんと貴哉くんも参加して欲しいな♪八月に入ってからだけど、前もって言えば貴哉くんも大丈夫だろう?」
「俺から誘っておきますよ。そっちには参加させます」
「ありがとう。それじゃあそろそろ戻ろうか」
詩音さんは当たり前のようにごく自然に会計の札を持ってレジへ向かった。
詩音さんとどこかへ行くと必ず払ってくれる。普段俺は払う方だから少し調子が狂うけど、詩音さんの時は黙って奢られる事にしている。
「ご馳走様です」
「こちらこそ楽しい時間をありがとう♪」
どこまでもかっこいい詩音さん。
そんな人が神と認めた貴哉は本当に凄いよ。
ここまで詩音さんに気に入られるなんて、何だか無性に貴哉に会いたくなってきたな。
「午後一、貴哉の様子見て来てもいいですか?」
「おや?恋しくなったかい?」
「ボラ部の先輩としてちゃんとやってるか見に行くんですよ」
「そう言えばいーくんが部長になるんだろ?梓に聞いたよ」
ボラ部の部長の梓さんと、詩音さんは仲が良い。たまに一緒にいるのを見かける。
「はい。断ろうと思ったんですけど、他に適任者がいなくて」
「はは、いーくん程何でも出来る人なんていないもんね。うん。行って来なよ貴哉くんの所」
「ありがとうございます」
その後俺は気分良く貴哉達が使っている部室へ向かった。
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