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※空くんにだけ特別ね〜♪
空side
桐原さんと話してからの俺はただスケッチブックの前に座ってボーッとしていた。気付くと昼になってて、平塚さんが心配そうに声を掛けてくれた。
「空くんどうしたの?いーくんに嫌な事言われた?」
受け取ったいちごオレを渡したから桐原さんと会った事は平塚さんは知っている。
確か平塚さんと桐原さん、それと香山さんの三人は幼馴染だったな。少し相談してみるか。
「すいません。集中出来なくて。あの、少し話聞いてもらえませんか?」
「いいよ!お昼食べながら聞くね♪今日のお弁当貰って二人で食べよー」
昨日の昼食はボラ部に一旦戻って部長が買って来てくれたと言う学生御用達の弁当屋のデラックス弁当を貰って部室でみんなと食べた。
今日も用意してくれてるらしいので一度平塚さんとボラ部に戻る事になった。
「いーくんと何を話して元気無いのかは大体想像つくけど、いーくんは悪い人じゃないんだ。でも、今回のいーくんは違うって言うか、俺からも話したい事があるんだよね」
「聞かせて下さい」
「うん。空くんだけに特別ね~♪あ、貴ちゃんにも話しちゃダメだよ?」
内緒ねと人差し指を立てて言う平塚さんはまるで女子のようだった。背も低くて誰よりも小柄。元気があって存在感は抜群にあるけど、いつも女子が好きそうな可愛い小物とか身につけてるし、見た目はパッと見女子だ。
それから弁当を貰った俺と平塚さんは天気が良いので屋上まで来て食べる事にした。
「さてと、今日のお弁当何だろな~♡わー!ハンバーグだぁ♡」
「ほんと平塚さんって女子みたいですよね」
「そう?俺ね、お姉ちゃんが三人いるんだけど、小さい頃とか良く女装させられたりして一緒に遊んでたから自然と女っぽくなっちゃったの~。中身はちゃんと男だけどね」
「へー、お姉さんが三人もいるんですね。何か賑やかで楽しそう」
「賑やかだよー。一番上とは八個も離れてるんだけど、やっぱり長女なだけあって頼りになるよ。次女は誰よりもお洒落好きで、良く買い物に連れ回される。三女は二個上なんだけど、一緒に恋バナとかするんだー」
「あはは、女子っぽーい。俺も男友達より女友達と過ごす事が多かったんで似たような環境でしたよ」
「空くんて女の子にモテそうだもんね~!いっぱい遊んで来たんじゃない?」
ニヤニヤしながら聞いてくる平塚さん。本当の事だし平塚さんには隠さず話す事にした。
「いっぱい遊んで来ましたよ。来るもの拒まずって感じで。色んな女と遊んで来ました。でも貴哉と付き合って全部切りました。そしたらスマホのメモリがほとんど空になりましたね」
「あはは!どんなけ女の子と遊んでたのー!俺には縁のない世界だ~。じゃあさ、男の子と付き合うのは貴ちゃんが初めて?」
「初めてです。自分でも驚きました。男を好きになるなんてね。貴哉も初めてらしいですけど」
「うわぁ♡何かいいねぇ♡お互い本当の愛に気付いた感じ~♡もっと聞きたーい♡」
「初めはちょっかい出すと向きになって返してくる貴哉が面白くて、女とばっかいる俺に真面目に返してくれる人なんていませんでしたからね。新鮮で、楽しくて、気付いたら好きになってました」
「少女漫画みたいで憧れるぅ♡なるほどなー!そこで恋のライバル、いーくんの登場って訳か」
「そう言う訳です。前にも同じクラスでライバルはいましたけど、正直桐原さんは手強いと言うか……さっき正論を言われたんです。俺がすぐガキっぽいやきもちをやくせいで貴哉を困らせてる。やき方を変えてみろって。じゃないと俺に奪われるんじゃなくて他の形で失うぞって。その通り過ぎて何も言い返せませんでした」
「いーくんらしいな~。いーくんが貴ちゃんの事を本気なのかは分からないけど、もし本気だったとしたら完全に貴ちゃんに踏み込めないんだと思う。だからそんな曖昧な言い方するんだよ。貴ちゃんを奪いたい気持ちもあるけど、諦めて二人を応援したい気持ちもあるんだね」
「どうしてですか?訳があるんでしょ?」
「うーん。本当にほんとーに!誰にも言わないって約束出来る?」
「はい!約束します!」
平塚さんは一度深呼吸してから俺に話す覚悟を決めたようだ。
食べ終わった弁当のゴミを軽く片付けてから話し始めてくれた。
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