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人前でキスするとか俺でも嫌だわ!
空とそのまま帰ろうとしたけど、数馬がいるから一度ボラ部に戻る事にした。直登がいるけど、心配だからな。
「なぁ、そういや直登の事聞いたか?」
「あー、見学だろ?暇なんじゃん?」
「数馬の事は聞いてねぇのか?」
「数馬がどうしたんだ?」
どうやら空は直登がボラ部に見学しに来た事は知ってるが、数馬の事を好きだと言う事は知らないらしい。直登の事だから話しても大丈夫だろうと思って俺は空に本当の事を教えてやった。
「ええー!中西が数馬を!?いつからだよ!全然気付かなかった!」
「俺も今日知ったんだ。帰りに聞いてみようぜ~」
「いや、でも何で数馬なんだ?数馬にギャップあったか?」
「あり過ぎだろ!見た目と中身とか!」
「確かに。数馬は何て?」
「怯えてる」
「ギャハハ!だろうな!中西ぐいぐい行くから数馬にはキツいだろーな!」
「いや、数馬にはそれぐらいの方がいい気がするんだ」
「えー、そうかぁ?」
「これは数馬の病気を良くするいい機会だと思ってんだ」
「んー、まぁ数馬がパニックにならなきゃ何でもいいけどよ。お、噂をすればってやつー?」
ボラ部の前で揉めてる二人を見つけてやれやれと思いながら近付く。どうやら直登が嫌がる数馬を無理矢理外に引っ張り出していたらしい。
「貴哉ぁ!助けて!」
「コラー!すぐに貴哉に助けを求めるな!」
「ちょ、直登落ち着けって」
「数馬泣いてんじゃん。中西こえー」
「俺っ貴哉を待ってるって言ったのに、な、直登が無理矢理っ」
「そりゃ直登が悪ぃな」
「うん中西が悪いな」
「数馬くん?貴哉には空くんがいるんだよ?だから俺と帰ろう?」
「やだっ貴哉と帰る!」
「四人で帰ればいいじゃねぇか。ほら数馬も泣くの辞めろって。いいよな?空」
「もちろん。面白そうだしー」
「もー、貴哉より強敵だよ数馬くんは!」
まだ怯えて俺の腕をガッツリ掴まえて離さない数馬。涙目になっちゃってかわいそー。
ゴシゴシと涙を拭く数馬の顔を見て何か違和感があって、なんか変だとジーッと見ていた。
「な、何?貴哉」
「何か数馬、いつもと違くね?」
「え?え?」
「どれ?あ、ピアスだ。ほら口んとこの今日付けてねぇじゃん」
「!」
数馬は空に指摘されてバッと口元を隠した。
あー、確かに大量に付けてるピアスが口のとこだけ無かったわ。昼までは確か二個ぐらい輪っかみたいなのがあったのがさっきは無くなってたんだ。
「そっか!口のピアスしてねぇのか!」
「はーい♡俺何で付けてないのか知ってるよー♡」
「な、直登!」
数馬の変化に気付いた俺と空に直登が嬉しそうに手を挙げて言った。へー、理由があんのか。飯食いずらいから外したとか?
「何?数馬がピアス取った理由って」
「それはねー♡うふふ」
「だ、ダメっ!直登言っちゃダメ!」
「どうしてぇ?俺こういうの隠すの好きじゃないんだよ」
何か二人で言い合ってるけど、直登は知ってるんだよな?まぁ数馬が知られたくねぇなら無理に聞く訳にはいかねぇか。
諦めようとした時、直登が数馬に近付いて来てニヤリと笑った。そしてぐいっと数馬の顔に顔を近付けて……
「言うより見せた方が早いだろ♡」
「なおっん!!」
「!!」
「!!」
俺のすぐ横で怯える数馬にキスしてた。
これには俺も空も目を丸くして驚いた。
えー!数馬がピアス取った理由って、直登とちゅーするから!?
直登はキスした後離れて、嬉しそうに数馬に抱き付いていた。数馬はと言うと、顔を真っ赤にしてポロポロ泣いていた。
何なのこいつら?え、もうそういう仲になってるの?
「こりゃ驚いたなー。中西と数馬ってもうデキてんの?」
「んーん。まだだよー?俺が数馬くんに好きになってもらいたいから頑張ってるとこー♡」
「てか数馬大丈夫かぁ?こんな泣いちゃって……」
「うう、直登酷ぇよ……こんなとこで、貴哉も見てるのにぃ……」
「あーあ、数馬泣くなって。直登ももういじめるなよー」
「いじめてないし!二人きりだったらちゃんとキスしてくれるもんっ」
「ここは二人きりじゃねぇだろ!大体お前はいつも強引過ぎるんだよ!もっと数馬の事考えて行動しろよ!」
「貴哉に言われたくないよ!そもそも貴哉が数馬くんを甘やかすからいつまでも慣れないんでしょ!」
「人前でキスするとか俺でも嫌だわ!」
「まぁまぁ、二人共落ち着けって。とにかく帰ろうぜー?ほら数馬も元気出して。貴哉がちゃんと送ってってくれるから」
「……ありがとう」
俺と直登が言い合いの喧嘩になりそうになって空に止められた。それにしてもこのままじゃ直登には数馬を任せられねぇなぁ。
毎回こんなんじゃせっかく外歩けるようになったのに、また引き篭っちまう。
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