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※擦り傷だ!だから泣くなよ!
※伊織side
今日は演劇部毎年恒例の夏休みBBQ大会だ。ボラ部として今年は貴哉と一緒に参加していた。
本当ならとても楽しみにしていたけど、貴哉とはこの前綺麗に終わらせたつもりだけど、俺はまだ諦めきれてない。手は出さないと決めたけど、時々危なくなる。
目の前で笑う貴哉を、引き寄せて抱き締めてキスしてそして、めちゃくちゃにしたくなる。
それに貴哉も貴哉なんだよなぁ。早川んとこ戻った癖に俺の気を引くような仕草や言動取ってくるんだもん。期待しちゃうだろ。
そんな訳でこのBBQ大会でもなるべく距離を置いてんだけど、自然と目で追っちゃうわな。さっきも着替えに困ってそうだったから助けちまった。
今だって二之宮達と楽しそうに肉食って……なくね?二之宮と七海は一緒にいるけど、貴哉の姿が見えない。まだ着替えてんのか?
他の一年達はもうすっかり合流してバーベキューを楽しんでるけど、貴哉の奴どこ行ったんだ?
俺は心配になり、二之宮に声を掛ける事にした。
「なぁ貴哉は?」
「え?まだここには戻ってないぞ」
「てか秋山はいーくんのとこ行ってるのかと思ったし」
俺が尋ねると二人は目を丸くしていた。他のグループにもいないみたいだし、探しに行くか。
すると二之宮に心配そうに聞かれた。
「秋山がどうかしたのか?」
「さっきからどこにも見当たらねぇなって。ちょっと探してくるわ」
「それなら俺も行く!」
持っていたトングを置いて名乗り出る二之宮。
こいつもすっかり貴哉に懐いたよな。初めは睨み合ってた二人だけど、こうして仲の良い所を見ると嬉しくなる。
だけど俺は二之宮に断った。
「いや、ここに貴哉が戻って来るかもしれない。そしたら連絡くれ」
「……そうか。分かった。待ってる」
「ん。じゃ行ってくるわ」
「あ、桐原!」
「はい?」
「貴哉を頼む!」
「了解♪」
二之宮と七海を残して俺はバスに向かった。川から上がって行くとしたらまず着替える為にバス行くだろ?そこにいなかったらトイレとか?んー、とりあえず行きそうな所を辿ってみるかー。
バスが見えて来て何となく感じた違和感に少し急いで近付く。すると、バスの入り口で運転手さんと、うちの学校の奴が揉めていた。
てかバス揺れてね?もしかして中に貴哉がいるのか?
「何かあったのか!?」
「げ!桐原ぁ!?」
俺の顔を見た男は嫌そうな顔をして、誤魔化そうとしたが俺は見逃さなかった。絶対中に貴哉がいるんだ。
「君はさっきの!私も困ってるんだよぉ!この子が中に入るのを止めて来てね?どうやら中でさっきの子が喧嘩してるみたいなんだ……」
「貴哉!」
運転手に聞いて俺は男を突き飛ばしてバスに飛び乗る。
そして目に入って来た光景を見て俺は頭に血が上っていくのを感じた。
「い、伊織!」
「桐原だと!?」
「やべーよ!おい、逃げよう!」
中にいたのは貴哉の他に二人。演劇部ではあまり関わり合いのない奴らだけど、今はそんな事どうでもいい。
男二人がかりで押え付けられてる貴哉はまだ水着姿で、どこかにぶつけたり擦ったかで出来た傷が体の至る所に出来ていた。
俺は込み上げる怒りに拳を握り締めて近付く。
「どこに逃げようってんだ?あ?」
「待て!先に手を出して来たのはこいつだ!ほら!俺のオデコ見ろ!」
「てめぇが俺の乳首舐めたからだろ!気持ち悪ぃ!」
それを聞いて俺の怒りは頂点に達した。貴哉に手を出したという男の胸倉を掴んで貴哉から引き剥がす。もう一人の男もそれを見て小さく悲鳴を上げて貴哉から離れた。
「貴哉に何したって?俺に教えろよ?」
「ご、ごめんっもうしないから!」
「言えよ!クズ野郎!」
掴んだ胸倉を更にキツく掴み、ぐわんぐわん揺らしてやると、男はガタガタ震えて涙目になっていた。だけどそんなんで俺の怒りは収まらねぇ。今度は殴ろうと腕を振り上げた所で、床に倒れてた貴哉がいつの間にか起き上がり、俺の腕を掴んで止めていた。
「ダメだ伊織!殴るな!」
「何でだよ!こいつらお前にひでぇ事したんだろ!」
「殴ったらお前が退学になっちゃうかもだろ!そんなの俺やだ!」
「貴哉……」
今度は俺の体にぎゅーって抱き付いて来た。
ヤバい。めちゃくちゃ可愛い……
ほぼ裸の貴哉にそんな事をされながらそんな事を言われた俺はまるで戦意喪失。掴んだ胸倉も離して俺は貴哉を抱き締める。
「お、お前ら早く行けって!もう俺に関わるんじゃねぇぞ!」
「わ、分かったよ!ひぃ!」
貴哉が男二人を誘導して、通り過ぎようとしたもう一人を睨むと悲鳴を上げていた。
慌てて逃げて行く男達。貴哉はあんな奴らに汚い事をされたのか……
くそ、俺がもっと早く気付いて来てあげてれば……また俺は守れなかったのか……
そう思ったら悔しくて涙が出た。
「い、伊織?あいつらもう行ったぞ?」
「貴哉……ごめんな」
「はぁ?てかお前泣いてんのか?」
「ごめんっもっと早く来てやれば……こんな……」
「伊織……」
体を離して傷付いた貴哉の体をさする。痛いのかピクッと反応する貴哉。
「これぐらい大丈夫だって!擦り傷だ!だから泣くなよ!い、伊織らしくねぇだろ」
「貴哉を守れなかった……悔しいんだ」
「守ったじゃん!助けに来てくれたじゃん!乳首は舐められちまったけどな!でもされたのはそれだけだ!」
「どっちの乳首?」
「こっち?」
自分の右乳首を指さして教えてくれる貴哉。俺は迷わずその舐められたという方の乳首に吸い付いた。驚いた貴哉は後ろに身を引いたけど、俺は逃がさないように引き寄せた。
「い、伊織ぃ……」
「あいつら後でぶっ殺してやる」
「だから手を出すなって!俺も我慢したんだから!キモすぎて頭突きはしちゃったけど……」
「貴哉、もう俺から離れるな。俺が守るから」
「過保護だなぁ……でもまぁあいつらお前に相当ビビってたもんな。分かった。守られてやるよ」
「貴哉…」
「伊織、ありがとうな」
「ん」
「…………」
俺はキスをしたかった。でも出来ない。もう手を出さないって約束したから。
すると、バスのエンジンが付いて、バタンと言う大きな音がした。バスのドアが閉まった音だ。運転手が気を利かせてエアコンを付けて閉めてくれたのか。
「あの爺さんやるじゃん」
「だな。貴哉、寒くないか?」
「あいつらのせいで大分あったまったよ。そろそろ着替えるか」
「…………」
「あ、あっち見てろよ」
立ち上がって着替えようとする貴哉を何となく見てたら怒られた。いや、今でも十分ムラムラする格好してんだけどね?
真っ裸とかもっとヤバくない?
前に一度だけ貴哉を抱いた事があるけど、俺はあの時の貴哉を思い出して何度も一人でしてる。
そんな事貴哉は思いもしねぇだろうな。
「貴哉、エロい」
「っ!」
我慢出来なくて貴哉の腰に触れるとビクッとして奥に逃げようとした。
それを逃がさない俺。そのまま引き寄せてほっぺにキスをしてやる。貴哉の耳が赤くなったのを見て、俺は次に貴哉の履いてる水着に手をやった。
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