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黙れリア充共!
伊織と会場に戻ると既に食い終わった奴らが川とかで遊んでた。つい伊織とゆっくりしちまったなー。肉残ってっかなぁ。寝坊した俺は朝飯食ってないからもー腹ペコもいいとこ。
俺を見つけた茜がすぐに駆け寄って来てすげー心配された。
「貴哉!どこに行ってたんだよ!心配したんだからなっ」
「悪ぃ悪ぃ。ちと寝てたわ」
「寝てただと!?子供か!」
「それよりも早く食べちゃってよー。俺らだけ片付け出来てないんですけど」
つばが全体にある婆ちゃんとかが被りそうな帽子を深く被った七海に言われて見てみると、俺の分のがちゃんと残されていた。良かったー♪
さすが茜様ー♡既に焼けてる肉を再び網に乗せて温めて直してくれてるー♡
「やったー♡あ、お礼にピーマンやるよ七海」
「いらねぇよ!俺も散々二之宮に食べさせられたわ!」
「秋山、その腕の傷どうしたんだ?」
「え、ああこれか……」
さっきの男達に押さえ付けられた時に擦りむいた傷が至る所にあって茜に突っ込まれた。うーん、何て言おう?寝ながら転んだ?
悩んでると俺の横にいた伊織がヒョイっとピーマンを取って食って言った。
「泳いだ時に出来たんだよな?俺も去年何が何でも一番になりたくて岩とかに当たっても気にせず泳いだぜ」
「あ、そう言えば秋山初めに深みにハマってたもんな!その後の快進撃は凄かったけど、いきなりいなくなるから心配したぞ」
「まじ想像以上に深くて焦った。誰だよあんなあぶねー事考えたの!流れ早かったらみんな流されてるだろ」
「如何なる時でも特訓!それが演劇部なのー!それよりも二人共遅かったけど、何してたんだろーね?二之宮ぁ、秋山からいーくんの匂いプンプンするよー♪」
七海がグイッと近付いて来てクンクンと犬みたいに俺を嗅いだ。まるでチワワだ。
これには伊織は助けようとはせず、むしろ堂々としていた。
「最後まではしてねーよ。な?貴哉」
「おいっ!少しは誤魔化せよ!」
「何だ、桐原とは終わったんじゃなかったのか」
「終わる訳ねぇじゃん。俺狙ったものは逃さねーもん」
「いいなー♡いーくんにそんな事言われたーい♡」
「お前は茜だろ」
「ちょ!秋山余計な事言うな!」
「え、七海って二之宮の事が好きなのか?意外だなぁ」
「いーくんまで!」
俺と伊織で茶化すけど、茜は気付いてるのか気付かない振りなのか俺の分の肉を一生懸命温めて直してくれてた。
そんな茜は俺達の視線に気付いて、不思議そうに首を傾げた。
「お前もう告っちゃえよ。そんで潔く振られろ」
「秋山ぁ!他人事だと思って勝手な事言うなぁ!」
「何だ?俺の話なのか?」
「に、二之宮は肉焼いてろ!」
「?」
「マジで余計な事言うなよ秋山。二之宮は桃山って言う恐ろしい魔獣を飼ってるんだからよ」
「桃山か!そう言えば二之宮って何で桃山と付き合う事にしたんだ?」
伊織が聞いてるけど、俺は知っている。正にその現場にいたからな。ちょっと優越感ってやつ?
「何でって、俺の事を好きって言ってくれたからだよ」
「それだけ?」
「ああ。初めてなんだ。誰かに告白されたの」
「茜は友達いねぇもんな」
「秋山、もう突っ込まないぞー」
二人共茜の答えにポカンと口を開けて見ていた。付き合う理由がそれだけって確かに驚くかもな。俺は付き合うまでを知ってるから何とも思わないけど。
「おい、七海でもいけるんじゃね?」
「そ、そうかなぁ?俺も今の聞いてそんな気がして来たぁ♡」
「辞めとけって。桃山に殺されるぞ」
「桃山ももっと普通にしてりゃ良い男なのにな」
「普通にしててもヤバい奴でしょ。いつもマスクしてるし、髪型変だし」
「あー、お前桃山のマスクの下見た事ねぇんだ?」
「見る訳ないだろ?興味もないよ」
「見たら驚くよな?」
「ああ、俺も驚いた」
話をしながら茜が皿に乗せてくれる肉をパクパク食う。たまに野菜も置かれるからそれは伊織にあーんしてやる。するとパクッと食ってくれる。
そんなやり取りを普通に喋りながらやってたら茜に笑われた。
「あはは、お前ら息ぴったりだな」
「あ、茜が笑ったー」
「二之宮って笑うんだー」
「何か兄弟みたいで面白いな」
「二之宮ぁ♡笑顔可愛い♡」
「そ、そうか?言われ慣れないから変な感じがするな」
「茜って結構笑うぜ。なぁ?」
「秋山が面白いからな」
「てか仲良くなり過ぎじゃね?俺やきもち焼いちゃうー」
伊織が俺のほっぺをツンツンしながら言ってくる。何かこういう伊織って久しぶりだな。最近は距離があった感じしたから何か嬉しいな。
「なぁ伊織、絶対空の前では辞めろよ?頼むからな?」
「どうしよっかなぁ♡」
「ねぇ空って?」
「秋山の彼氏だよ」
「はぁ!?お前彼氏いんのにいーくんとイチャイチャしてんの!?ありえねー!」
「うるせぇぞチワワ!」
「七海ぃ、貴哉の彼氏に色目使って落としちゃってよ♡そしたら貴哉フリーになるから♡」
「や、やだよっ!二之宮ぁ、こいつらおかしいって!」
「そうか?俺は二人が仲良いの好きだぞ。それに俺と湊も秋山となら浮気オーケーだしな」
「それまだ言ってんのかよ……」
「お前らのが訳分かんねぇじゃん。貴哉とならって何?他はダメって事?」
「ああ。お互い浮気は許さない。だけど秋山とならいいと思ってるんだ。俺と湊は秋山の事が大好きだからな♪」
「あー、分かった。二之宮が桃山と付き合ってる理由。二人共変人じゃん」
「な、なぁ二之宮?俺はダメかなー?」
「ダメだろうな。湊が嫌ってるからな」
「桃山に気に入られれば二之宮と浮気していいのか!?」
「……物凄く気に入られれば湊の許可は出ると思うが、そもそも俺は浮気なんかしないぞ」
「そうですよねー!浮気はダメですよねー!」
「はい七海残念ー」
「七海どんまーい」
「黙れリア充共!」
すっかり俺と伊織に遊ばれる七海がおかしくて笑った。
茜と七海とはこの前まで敵みたいな関係だったのに、今ではこうして一緒に馬鹿を言って笑える仲になっていた。
俺のタメ口にも何も言わないし楽でとても居心地が良かった。
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