早川と勝負すんだよ♪

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早川と勝負すんだよ♪

 電話を切った後、俺は伊織とバス停にいた。  みんなが乗ったバスはさっき通り過ぎて行ったから知ってる奴は乗ってねぇだろ。でも空にも伝えたし、俺と伊織が一緒にいても変じゃないけどな。   「あーもう川なんかに潜ったから髪バサバサじゃん」 「いいじゃん♡風呂上がりの貴哉みたいで可愛い♡」 「可愛いは目指してねーっつーの」 「初耳だわ。どこ目指してんのよ?」 「そりゃかっこいいに決まってんだろ!我はブラックキング様だー!」 「おっ懐かしー。てかそれ悪役じゃん。悪役の癖に変に人気あったよな」 「めちゃくちゃかっこいいじゃん♪俺、あれ大好き♡」 「ほんと可愛いなぁ♡なぁエッチしたい♡」 「ふざけんな!ダメに決まってんだろ!」 「早川が来るまで貴哉んち寄っていい?」 「ダーメ。この後空が来るんだ、鉢合わせしたらどーすんだ。めちゃくちゃ怒るだろ」 「俺、外でもいいけど♡」 「テメェは犬か!チワワとでもやってろ」 「やだよ。貴哉としかやらねーもん」 「……お前はまたっ」  そういう嬉しい事を言う……  本当は怒らなきゃいけないのに、喜んでしまう自分がもどかしい。  終わりにしなきゃいけないのに、終わりにしたくないこの関係。  伊織はどう思ってるのか知らねーけど、俺は結構悩んでいるんだ。 「あー、このままバス来なきゃいいのになぁ」 「伊織、お前さ……」 「んー?」 「辛くねぇの?俺の事なんか好きになっちゃってさ」 「辛くはねぇよ。あ、嘘。自分だけの物に出来ねぇのは辛い。でも楽しいの方が大きいから気にならねーよ」 「お前らしいな」  伊織らしい言葉におかしくて笑うと、伊織も笑った。  俺は自分がこんなにもズルい性格してるとは思わなかったな。空と付き合ってて伊織の事も欲しいと思ってるんだ。  もし伊織が俺の事を辞めたとしても伊織の事が好きなんだろうな俺。  俺達が乗ろうとしていたバスが来て中に乗り込む。本当に家まで送ってくれるみてぇだな。 「空いてるな♪座ろうぜ」 「伊織、ありがとうな」 「なにがー?」 「送ってくれてさ」 「いいって。今日はこの後なんもねぇしな。だから早川遅れて来てくんねーかなって」 「ばーか」 「なぁ、早川に会いたいか?」 「へ?そりゃ……」  チャラ男号を飛ばして急いでこちらに向かっている空を想像したら笑えた。あいつ普段はやる気なさそうにしてるくせに俺の事になると一生懸命だからな。 「うわ、今早川の事考えてんの?すげぇニヤけてるぞ」 「うるせぇ!」 「いーなー早川!あー、俺が先に会ってればなぁ」 「…………」  確かにタイミング次第では空よりも伊織を先に好きになっててもおかしくねぇな。そしたら空と伊織の立場は逆だったんかな?  いや、空はこんなにしつこく好きとか言ってこねぇか。   「伊織お前って根性あるのな」 「いきなり何?」  俺が突然変な事を言ったから伊織が笑う。  みんなが立ち止まってうっとりするぐらいのモテ男。今ならその魅力が良く分かる。男でもかっこいいって思わせるんだから伊織は本当に凄い。   「あはは、貴哉が変な事言ってるー」 「俺がお前の立場だったらさっさと忘れて次行くぞ。お前なら相手選び放題だもんな」 「まぁね。でも俺からしたら選択肢は貴哉しかないから選び放題でもないぜ?しかも選んでも報われねぇし」 「伊織……」 「ま、何とかして落とすけどな」 「やってみろよ」 「あーまじ貴哉とセックスしてぇー!」 「お前落とす気ねぇだろ?」  人が少ないとは言えバスには他の乗客もいるってのに、気にせずそんな事を大きな声で言うもんだから俺が恥ずかしくなったわ。   「そうだ!俺いい事思いついた!」 「ロクでもねぇことだろ」 「早川と勝負すんだよ♪」 「何のだよ」 「セックスの♡」 「はぁ!?何言ってんだ?」 「どっちが貴哉を満足させられるか同時に貴哉を責めるんだ♪3Pってやつだな」 「とにかくもう少し声落とせ!」  またとんでもない事を言い出したなこいつは!そんなの空が許す筈がない。俺だって二人同時とか嫌だ。あり得ないな。 「却下。空の機嫌悪くなるだけだろそんなの」 「俺は全然出来るけどな♪二人共知らねー奴じゃねぇし」 「やっぱ頭おかしいわお前。次のバス停で降りろや」 「とりあえず早川に聞いてみよーぜ♪」  ノリノリな伊織を相手にするのも馬鹿馬鹿しくなったから俺はスマホをいじって家の近くのバス停まで過ごす事にした。  
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