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「2学期が始まってすぐのころ、体育のバスケで僕が怪我したことあったろ?」
体育の授業は1組と2組の合同で受けることになっているから、瀬戸も同じ体育館にいた。
「あのとき、保健室が閉まってたから外の手洗い場で冷やしてたんだけど、穂村さんがたまたま向かいの体育館から見てて、気にかけてくれたんだ。それが知り合うきっかけで、あとはたぶん、僕がひとりでいることが多いから、気をつかって話しかけてくれるんだと思う」
嘘はついていない。極端に不自然な点もないはずだ。しかし瀬戸は腕を組んだまま険しい表情を崩さなかった。つい、どうかしたのかと尋ねてしまう。
「いや……その話を聞く限り、最初からあいつの方から関わろうとしてる感じだよな」
「まあ、そうかも」
「それが少し不思議で」
「……」
うまく平静を装えなかったのか、瀬戸は「そうじゃない」と言った。
「別に相手が樋上だからってわけじゃない。誰であろうと、あいつがここまで積極的に人と関わろうとしてるのが不思議なんだ」
今度は僕が首を傾げる番だった。彼女の性格を考えたら、何も不思議なことはない。
「その時はまだ知らないはずだし……」
話の流れが全く理解できない。そんな僕を置き去りに、瀬戸は何やらあごに手を当てて考えを巡らせ始めた。たまらず説明を求めると、少し間があってからようやく顔を上げた。
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