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「あいつ、クラスではあまり自分から人に話しかけたりしないんだ」 「そうなの? 休み時間とか、よく友達と話してるイメージだけど」 「そりゃあ、全く友達がいないってわけじゃない。話しかけられれば愛想よく対応してるから、人と接するのは今も別に嫌いじゃないんだと思う。けど、自分からはほとんど行かない。入学して1週間くらいは、誰とも口をきかなかったんじゃないかってくらい」  にわかには信じがたい。瀬戸と話すこともなかったのかと訊くと、入学前に彼の方から関係を隠すように頼んだのだと言う。彼女に近づきたがる男子たちの相手をするのが嫌だったそうだ。 「それに、学校での立ち振る舞いがあんなに変わってるなんて知らなかったからさ。小学生のころは、クラスの全員と友達になろうとするようなやつだったんだけど」  僕が思い描く人物像としても、その方がしっくりくる。 「気が強くて、男子たちともよく喧嘩してたよ」  へぇ、と声が出た。そんな姿、想像もできない。 「怒ったあいつはめちゃくちゃ怖いからな。何か揉めてるなら、早めに謝った方がいい」 「だから、そんなんじゃないって」  そう言って笑うと、瀬戸も少しだけ笑った。そしてそのあと、少し声のトーンを落とした。 「ただ身体が弱くて、しょっちゅう熱を出して学校休んでたな。何度か大きい病院で精密検査なんかも受けてたみたいだし」  そこで一旦言葉を切ってから、思い切ったようにまた口を開いた。
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